毎日一語、中国語~ニャンコ(猫)
まだ辞書に載っていない中国語の新語をひたすら書き連ねていきます
ニャンコ(kitty cat /pussy cat)
ネコです。
どうやら中国大陸がネコブームらしいです。SNSでもネコの写真をやたらと見かけます。そんななか、「ネコ」ならぬ「ニャンコ」的な呼び方が広まっています。
猫咪 /喵星人
"猫咪"の"咪"はネコの鳴き声を表す擬声語。音はみーです。日本語の「ニャンコ」に近いと言えよう。
"喵星人"の"喵"もネコの鳴き声を表す擬声語。音はみぁおです。最初は、〇〇星人=〇〇愛好家かと思いましたが、さにあらず。ネコそのもののことでした。神秘的なところが宇宙人っぽいってことらしい。
こういう「ニャンコ」的な呼び方は、やはり台湾発です。台湾はだいぶ前からネコブームでしたからね。少なくとも2000年頃には、台湾のテレビ番組で、すでに"貓咪~"と言ってました。
そう言えば、タマ駅長とかネコカフェとか、台湾の皆さんに人気だったもんね。
あと、台湾の大御所タレント、呉宗憲さんがよくネコのことを"貓咪老師"(ニャンコ先生)と呼んでたんですよ。何でだろう?と思って後に台湾の留学生に聞いてみたら「夏目友人帳のニャンコ先生に由来している」との返事。
でも絶対違う!呉宗憲さんが言ってたのは2000年頃で「夏目友人帳」のアニメ化は、その数年後だもん。う~ん、もしや「いなかっぺ大将」のほうか?呉宗憲さんの世代ならあり得る。
"喵星人"については、2017年の香港映画にこういうのがあったんですね。
遠い"喵星"(ニャンコ星)から地球にやって来た宇宙人、"喵星人"(ニャンコ星人)と地球人一家との交流を描くハートフルSFコメディです。主演は古天楽(ルイス・クー)さん。この映画が"喵星人"という呼び方のきっかけになったのかどうかは不明。
まあいずれにしろ、"猫咪~"とか"喵星人~"とか言っている人はネコ好きでしょう。一般人は"猫"です。
中国大陸のネコ史
鄧小平さんの"不管白猫黑猫抓到老鼠就是好猫"(白いネコでも黒いネコでもネズミを捕りさえすればよいネコだ)は有名ですが、ネズミ駆除を目的に、古くから需要はあったと思われます。
2000年頃、広州で売られていたネコ関連グッズ。左から食器用洗剤、洗濯洗剤、殺虫剤。ホラーのようなネコが描かれています。特に殺虫剤の黒猫神はこえぇぇぇぇ!
あ、そう言えば、これもネコでした。
大陸産アニメ「黒猫警視」。ネズミ捕り=取締りのイメージなのかも。
古典文学にもネコが登場します。日本では「枕草子」に「命婦のおとど」という甘やかされネコが登場しますがー
明代の小説「金瓶梅」に出てくるネコ。悪女・潘金蓮の特訓を受けて、ライバルが生んだ赤ん坊を襲います。名前は雪獅子。真っ白なネコをイメージしてましたが、この絵だと違うね。
とりあえず、旧中国の大金持ちは、ネコに名前をつけて、屋内で飼っていたことが分かります。
でも新中国以降、ペットを飼うなんてブルジョワのすることだ!反革命分子だ!っつーワケで、ネコを飼う習慣はなくなります。ってかブルジョワがいなくなります。
ところで前世紀からの中国語学習者ならご存知かもしれません。かつて、こういう中国語テキストがありました。
北京在住の小学生女児・ミンミン(10歳)と、ネコのクロが中国語で会話する内容。
ミンミンは道端で野良猫のクロと出会い、家に連れて帰りますが、当然追い出されそうになります。なかでもお婆ちゃんはものすごくネコが嫌い、という設定。お婆ちゃんは平気でネコを虐待するし、ミンミンは他人の目に触れないように、こっそりクロを飼い続けます。
もちろんフィクションですが、時代を反映していると言えなくもない。
ところが改革開放が進み、小康社会建設も進むと、一部人民の関心がペットに向かいます。もともと金魚とか鳥とかを愛でる文化がありましたからね。
2000年頃、広州の中山大学留学生寮の窓から、隣の建物のベランダを撮った写真。
ネコが2匹いるの、分かります? この部屋にはお婆さんと数匹のネコが住んでいました。ネコはずっとのんきにしてたので非常食目的ではないはず。キャットフードなんて売ってなかったし、残飯とかあげてたのかなぁ。
この時代、北京、上海、広州など(今で言う一線都市)では、ネコを飼うのに衛生局への届け出が必要でした。登録料はネコ1匹につき500元だったと記憶しています。
当時の一人当たりGDPは約8000元(2020年のおよそ10分の1)。人民元自体の価値も低かった。もう「飼うな」って言ってるようなもんでしょ。上の写真のネコ達、十中八九無許可ですね。
そして時代は下り、2019年。ネコを飼っている人は2450万人。前年比8.6%の増加だそうです。2020年には新型コロナによる巣ごもり消費で、さらに増えていると思われます。
参考:《2019中国宠物行业白皮书》「2019年中国ペット産業白書」(北京華思聯認証中心 2020-04)
ちなみに、日本のネコ飼いさんは推定964万人だそうです。
人口10倍で換算すると、大陸のネコ飼いさんはまだまだ増えそう。独身の日セールでも日本のペットフードやネコ用商品がまとめ買いされてました。
中国ローカルのネコ、人気上昇中
大陸の富裕層は高価な洋猫とか抱っこしてそうですが、一般人民にはなかなか手が届かないと思われます。で、昔からそのへんにいたローカルなネコに人気が集まっています。大陸土着のネコは、"中华田园猫" (中華田園猫)と命名されました。
何だそれ?みたいなネーミングですが、これは中華田園犬から来ています。昨今のネコブームで、これまで注目されていなかった土着ネコが急に注目されるようになり、何だ、よく見りゃカワイイじゃないか、今まで名前もつけなくてゴメンネ、ってことで、急遽、中華田園猫と呼ぶことに決まったらしい。
と言うのも、大陸ではネコを可愛がる文化がなかったそうなんだよね。その理由は
- 潘金蓮はネコを飼っていたが、訓練して殺人兵器にするためだった
- イヌに関してはペキニーズとかシーズーとか改良品種が作られてきたが、ネコで改良品種がつくられたことはない、つまりペット需要がなかった
- 金魚や小鳥を愛でる伝統文化とネコは相容れない
みたいなことだと思われます(適当)。
そんなわけで長らく放置されていた中華田園猫。学術的な研究とかも全く行われていないので、どの系統に属するのか、ルーツが何なのか、一切不明。でも見た目は日本のそこらへんを歩いているネコと一緒です。
中国人はネコにどんな名前を付けているのか
わが国ではモモ、クロ、シロ、ココなどの名前が人気だそうですね。大陸のネコはどんな名前を付けられているんでしょー。
- 喵喵 にゃーにゃー(擬音)
- 妹妹 「かわいこちゃん」?
- 汤圆 しらたまだんご(食べ物)
- 花卷 うずまきマントー(食べ物)
- 球球 「ボールちゃん」?
- 豆豆 「お豆ちゃん」、「おちびちゃん」?(食べ物)
- 乖乖 「おりこうさん」、「いいこ」。岩合さんがよく言ってる。
- 跳跳 「ぴょんぴょん」、「ぽんぽん」とか元気に跳ね回る感じ?
- 蛋黄 卵の黄身、または卵黄を使ったお菓子(食べ物)
- 橘子 みかん(食べ物)。チャトラは中国語で"橘子猫"。
参考:我们统计了1000只猫咪的名字,找出了最沙雕和最常见的TOP10 「ネコ1000匹から集計 ありがちなおもしろネームTOP10」(猫研所 2020-05)
パンダの名前と同じく、繰り返し型が優勢なのねー。食べ物の名前が多いのはお国柄でしょう。みかん、黄身、しらたま、マントーは体色由来っぽいです。
ネコ連れの人民を見かけたら、とりあえず"喵喵~"と呼んでみてくださいね!
でも中国人ってネコ食べるんだよね?
ここから先はネコ料理の話題なので、苦手な方は読まないことをおススメします。
現在、ネコを食べる地方は限られています。大陸は広いので、全体で見ればネコを食べる人民は少数派です。
広東省にはネコ肉を食材とする料理がありますが、ヘビ料理と同じくとても高価。高いおカネ出してまでチャレンジしたいとは思えなかったので、私は食べたことありません。薬膳みたいな扱いだったと思う。
"广东名菜"(広東の名料理)と呼ばれる高級ネコ料理について知りたい人は
粤菜 龙虎斗
でググってみてください。画像検索は自己責任で!
大陸唯一! 深圳で野生動物の食用禁止条例がスタート
ネコ食に関係あるらしい法律が、広東省深圳で誕生しました。
新冠肺炎疫情发生以来,野生动物交易与滥食对公共卫生安全构成的重大隐患引发社会高度关注。市人大常委会率先就全面禁止食用野生动物开展立法,《深圳经济特区全面禁止食用野生动物条例(草案征求意见稿)》昨天(25日)在市人大常委会网站公布,狗、蛇、田鸡、甲鱼等在可食清单外的动物,或将被禁止成为“盘中餐”。
定了!深圳全面禁止食用野生动物「深圳が野生動物の食用を全面禁止を決定」(深圳新聞網 2020-04)より引用
新型コロナウイルス感染症の流行後、野生動物の売買と食用は公衆衛生に対する脅威として社会問題になっている。深圳市人民代表常務委員会は野生動物の食用を禁じる法整備を進め、「深圳経済特区野生動物の食用を全面的禁止条例」を、25日、深圳市人民代表常務委員会HPに公開。食用可リストに載っていないイヌ、ヘビ、カエル、スッポンなどは、今後、食用禁止になる可能性がある。
要するに、深圳のレストランではイヌ、ヘビ、カエル、スッポンの料理がフツーに提供されているってこと。
2020年4月と言えば、新型コロナで大騒ぎの頃です。当時は大陸でもコウモリ食が原因とされていました。これはマズい!と大急ぎで法律を作ったんでしょうね。それにー
- 2002年に流行したSARSの起源は、広東省のハクビシン料理とされていた
- 大陸では、広東人は"什么都敢吃"(何でも食べる)、"除了地上四条腿的桌子、天上飞的飞机之外,其他什么都敢吃"(四つ足のものは机以外、飛ぶものは飛行機以外、何でも食べる)と見られている
- 深圳は中国のシリコンバレーを自負している。外国人、外資企業も多く、国際イメージは大いに気になる
- 深圳はいろんな地方から来た人たちで構成されている新しい大都会。そもそも野生動物を食べようと思わない人が大部分を占めている
と言ったところでしょうか。
そして、人民日報のWeiboアカウントがこのニュースを取り上げて「イヌ、ネコなどのペット動物も、食用禁止リストに含む」と書きました。
このニュースにネコ好き人民は大喜び! 「すごくイイことだ」、「深圳はえらい」、「よくやった!」と絶賛の嵐です。BBCも報道しました。
参考:中国・深圳市、食用での犬猫の取引を禁止 国内都市で初 - BBCニュース
でも疑り深い私は条例の本文をチェックしてみましたよ。
たしかに
禁止食用用于科学实验、公众展示、宠物饲养等非食用性利用的动物及其制品。
深圳市第六届人民代表大会常务委员会公告(第一八四号) 深圳经济特区全面禁止食用野生动物条例 「深圳市第6回人民代表大会常務委員会公告(第184号)深圳経済特区で全面的に野生動物の食用を禁止する条例」(深圳政府オンライン 2020-04)より引用
科学実験、展示、ペット飼料など非食用として利用される動物と動物製品の食用を禁止する。
と書いてあります。
でもネコなどのペットを食べちゃダメとは書いていません。
また
禁止下列行为:
(一)私自屠宰家禽家畜;
(二)销售私自屠宰的家禽家畜;
(三)以提供食用为目的向消费者销售家禽家畜活体。
深圳市第六届人民代表大会常务委员会公告(第一八四号) 深圳经济特区全面禁止食用野生动物条例 「深圳市第6回人民代表大会常務委員会公告(第184号)深圳経済特区で全面的に野生動物の食用を禁止する条例」(深圳政府オンライン 2020-04)より引用
以下の行為を禁止する
- 家禽家畜をみだりにと殺すること
- と殺した家禽家畜をみだりに販売すること
- 食用に提供することを目的に、消費者に家禽家畜の生体を販売すること
とも書いてあります。
この「3」なんか、いくらでも言い逃れできそうじゃないですかー。日本のメディア風に言うと骨抜き法案という感が否めませんねー。
この法律、全文読んでも"猫"の文字は1回も出てきません。大急ぎで法律を作ったものの、ネコ食をやめたくない中共高官にでも介入されたかな?
ちなみに深圳には"猫咪咖啡馆"(ネコカフェ)も数店舗あるらしい。香港、台湾系かもしれないけど。
コトバは生き物です。上記はあくまでも現時点で主流の言い方です。