しーらかんす式

音楽と日本語と中国語のブログ

毎日一語、中国語~中国の新一線都市

まだ辞書に載っていない中国語の新語をひたすら書き連ねていきます

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新一線都市 (China's First Tier Cities)

しんいっせんとし

中華人民共和国の都市のうち、北京、上海、広州、深圳に次いで発展している都市とされる15都市、すなわち順に成都重慶杭州武漢西安、天津、蘇州、南京、鄭州、長沙、東莞、瀋陽、青島、合肥、佛山のこと(2020年版)。

「新一線都市」は、中国新一線都市研究所が、2013年から行っているポイント制の格付けによって決まる。順位は毎回変動するので下剋上もあり得るが、都市数は15に固定されているらしい。

歴史の浅い制度ではあるが、大陸では広く認知されており、「新一線都市」の言葉は、時に誇らしさを伴って使われている。

 

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新一线城市 [Xīn Yíxiàn Chéngshì] 

都市のことを中国語では"城市"と言いますね。"城"は城壁のことです。だから万里の長城は、壁だけなのに長城なのです。

中国の城は、日本の山城タイプのお城とは違って、城壁で囲まれた町全体のことでした。KOEIの三國志シリーズをやったことがある人は分かりますよね?つまり城壁の中に一般人がたくさん住んでいて生活していたんです。だから都市のことを"城市"と言うわけです。京城は"Beijing Castle"じゃなくて"Beijing City"だし、故宮紫禁城も"Forbidden City"だしね。

いっぽう"都市"という中国語も存在します。大都市、大都会、"大城市"のようなニュアンスで使われています。ただし、人口何万人以上とかの決まりはなくて、定義はかなり曖昧。

この"都市"、日本語から導入した和製漢語なんじゃないかと思っていたんですが、証拠は見つかりませんでした。艾芜という作家が1932年に発表した小説に"都市"という言葉が出ているそうですが、これが初出なのかどうかは不明。

ともかく、公的な文書では"都市"は使わない印象です。なので今回も"城市"

 

都市の発展を示す格付けとは?

主催者は、経済系メディア"第一财经"のシンクタンク部門“新一线城市研究所"(新一線都市研究所)。

正式名称は、《中国城市商业魅力排行榜》(中国都市商業魅力ランキング)。前年1年分のビッグデータを活用して

  • 商业资源集聚度(有形無形の商業価値がどれくらいあるか)
  • 城市枢纽性(都市アクセスの良さ)
  • 城市人活跃度(市民が活発に行動しているか)
  • 生活方式多样性(ライフスタイルの多様性)
  • 未来可塑性(将来への適応力)

という5つの指標で全国330余の都市を採点し、総合点を算出しています。2020年6月には、次の数の都市が選出されました。

  • 一线城市 4都市
  • 新一线城市 15都市
  • 二线城市 30都市
  • 三线城市 70都市
  • 四线城市 90都市
  • 五线城市 128都市(数は毎年微変動するので、"四线"未満の都市ということらしい)

そう、"一线"だけじゃなく"二线"から"五线"まで順位が付いているんです。"一线"の次を"二线"にしないで"新一线"にしてるの、中国語検定の準1級みたいですね。やる気を出させる作戦でしょうか。

いずれにしろ、"一线""新一线"都市戸籍を所有していることは、ものすごく誇らしいことみたいです。

"三线""四线"になると、卑下してみたり自虐的に"三四线"と語られている感じです。前に書いた"小镇做题家”たちの出身地が、まさにこの"三四线城市"に当たります。ほとんどが内陸部の都市です。

"五线城市"は残念賞って感じですね。ちなみに2020年の"五线城市"最下位は、大陸のハワイこと海南島三沙市でした(人口1800人)。

全ての都市とランキングを見たい人は 2020城市商业魅力排行榜正式发布 2020中国一二三四线城市名单一览 をどうぞ。

 

これまでの格付け結果は

最初に行われたのは2013年。2回目はなぜか間が空いて2016年。その後は毎年1回行われています。

結果は以下の通り。

2013
成都杭州、南京、武汉、天津、西安、重庆、青岛、沈阳、长沙、大连、厦门、无锡、福州、济南

2016
成都杭州、武汉、天津、南京、重庆、西安、长沙、青岛、沈阳、大连、厦门、苏州、宁波、无锡

2017
成都杭州、武汉、重庆、南京、天津、苏州、西安、长沙、沈阳、青岛、郑州、大连、东莞、宁波

2018
成都杭州、重庆、武汉、苏州、西安、天津、南京、郑州、长沙、沈阳、青岛、宁波、东莞、无锡

2019
成都杭州、重庆、武汉、西安、苏州、天津、南京、长沙、郑州、东莞、青岛、沈阳、宁波、昆明

2020
成都、重庆、杭州、武汉、西安、天津、苏州、南京、郑州、长沙、东莞、沈阳、青岛、合肥、佛山

参考:新一线城市_百度百科

 

パンダのふるさと、蜀の国の成都は安定の1位を独走中。それ以外は変動がありますね。広東省の東莞がじわじわ順位を上げています。深圳、香港に近いだけのことはありますねー。

あれ!?そう言えば、香港、マカオは対象外なのね。"一个中国"なはずの"台湾省"の都市も入ってないね。ビッグデータがないってことか。

 

そもそも何で都市に格付けなんかしてんの?

ランキングブームのせい

なんとなくですが、近年の大陸はランキングブームな感じがします。ランキング好きな日本の影響なのか、いろんなランキングサイトが乱立してるんですよ。そのうち国営の大陸版オリコンみたいなの出てきそうな気がする。

 

地方政府のモチベをあげるため

"新一线城市"下剋上があるだけでなく、"一线城市"の北京、上海、広州、深圳も順位が変動します。北京と上海は入れ替わりますし、広州は早晩、深圳に抜かれるでしょう。悲しい;;

実際、このランキングが1つでも上がると、不動産価格が上がったり、国内外からの投資が増えたり、戸籍を欲しがる人民が増えたり、いろんな面に如実に跳ね返るらしいですよ。

だから、事細かに数字を出すことで、競争心を煽ってるんじゃないでしょうか?

 

政府のスマートシティ構想と合致

でも一企業のシンクタンクがやってる格付けが、なんでそんなに権威を持っちゃってるの?歴史も浅いのに、と思いますよね。そもそも格付けをやってる第一财经自体、2003年設立の新しい企業です。

けど、第一财经の親会社、上海文化广播影视国営企業。ここはやはり、政府の方針に従って始めた事業だということでしょう。

その政府の方針とは、2014年の国家新型城镇化规划(新型都市化計画)。

coelacanthidae-style.hatenablog.com

その2年後の2016年に始まった格付けですから、もうこれは政策の一環に間違いないですね。

「新型都市化計画」は、「2021年7月の中国共産党成立100周年までに、小康社会(いくらかゆとりのある社会)を全面的に完成させる」という大目標の一環とも言える政策です。

今のところ、「小康社会の全面的建設は大きな進展を見た」としていますが、まだまだ貧困層は大量に存在するし、都市ごとの所得格差は半端ないわけです。

そんなこんなで、政府は7月の100周年までに、画期的な成果を宣伝したいんじゃないでしょうか。次回の2021年版都市格付けが6月に出てくるとしたら、ものすごくいい感じのランキングになっていたりして!(どんな「いい感じ」かは不明だけど。)

 

 

 

コトバは生き物です。上記はあくまでも現時点で主流の言い方です。