しーらかんす式

音楽と日本語と中国語のブログ

毎日一語、中国語~中国の夢(中国共産党用語)

まだ辞書に載っていない中国語の新語をひたすら書き連ねていきます

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中国の夢(Xi Jinping's China Dream /Xi Jinping's China Dream /Chinese Dream)

ちゅうごくのゆめ

2012年11月、習近平政権の成立後に突如出てきたと言われているスローガン。

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「中国の夢」の英語訳は、あまり定まっていません。新華社通信の英語版も"China Dream"と書いたり"Chinese Dream"と書いたり、表記ゆれがあります。でも外国語大学の教授など英語学者さんなんかは「China Dreamと訳すべき」と主張しています。

なぜかと言うと、"Chinese"という単語が英語圏では、無秩序、うるさい、混乱を表す貶(けな)し表現だからっつーことらしい。

そういえば2020年の映画『モンスターハンター』が、中国大陸で突如上映中止になり「和諧」に追い込まれましたけど、あれも、"Chinese"絡みのセリフがきっかけでしたねー。

 

 

 

中国梦 [Zhōngguó Mèng] /实现中华民族伟大复兴的中国梦 [Shíxiàn Zhōnghuá Mínzú Wěidà Fùxīng de Zhōngguó Mèng]

中華民族の偉大な復興を実現する中国の夢」(以下「中国の夢」)は"习近平同志提出的指导思想"習近平思想)の大きなスローガン。

習近平政権が2期目に入った2017年、"十九大"中国共産党第十九回全国代表大会)で《党章》(党規約)の改正案が可決され、党規約に「中国の夢」が追加されました。

「中国の夢」とは

2012年11月、習近平主席が中国国家博物館の展示、《复兴之路》(「復興の道」)を見学した後に、

实现中华民族伟大复兴,就是中华民族近代以来最伟大的梦想。

中国共産党新聞網 より引用

中華民族の偉大な復興を実現すること、それこそが中華民族の近代以来の最も偉大な夢である。

と語ったのが始まりとされています。

 

「中国の夢」の核心的目標~ふたつの百年

“两个一百年”(ふたつの百年)とは

2021年

中国共産党成立から100年のこと。この年までに小康社会を全面的に完成することが目標。

2049年

新中国(中華人民共和国)成立から100年のこと。この年までに中華民族の偉大な復興を実現することが目標。

つまり2049年までに「中国の夢」を実現するということですね。

「中国の夢」は何を実現しようとしているのか

「中国の夢を実現する」=「中華民族の偉大な復興を実現する」ということは、まだ復興は実現していない、これから実現しないといけない、ということ。で、何を実現するのかというとー

経済大国になる

一帯一路、中国製造、ブランド強化、双循環、AIIB、人民元の地位向上、法治による健全な経済、グリーン製造、国有企業改革、科学技術力、イノベーションの推進などを頑張って豊かな国になる。

軍事強国になる

軍備の増強、国産エンジンの開発、国防産業、情報産業の強化、制空権の防衛、宇宙からの攻撃、ネット侵入に対する防衛などを頑張って強い国になる。

個々の人民が幸せになる

貧困の撲滅、中間層の拡大、ふたりっ子政策、義務教育、医療、戸籍の改革、公共サービスの均等化、地域間の協調、腐敗の撲滅などを頑張っていろんな問題を解決し、文化的に魅力のある立派な国になる。

やらなきゃいけないこと、いっぱいあります。実現できてるようなのもありますが、ほんのちょっとという感じ。この大風呂敷を広げてるからこそ、習近平政権はいろんなことに同時進行で突き進んでいるんですね。さらに邪魔になるものは取り除くという。

これらのことをひとつひとつ着実に頑張っていくことで

国が豊かになり強くなる→人民が幸せになり諸問題が解決する→文化レベルが向上する→国力が増し魅力的な国になる⇢国際社会での影響力が増し、国際的地位が向上する→共産党の統治が安定し、社会主義の現代化が完成する

みたいな流れを2049年までに完成させるのが「中国の夢」ということです。

「中国の夢」、「中華民族の偉大な復興」には元ネタが!

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2010年1月1日出版、劉明福『中国の夢 ポストアメリカ時代の大国思想と戦略的ポジション』

劉明福さんは人民解放軍の軍人で、国防大学教授、軍隊建設研究所所長。

百度百科の紹介によると、

  • 2010年、中国のGDPはついに日本を抜き、世界第2位になった。いくら頑張っても不可能と思われていた「英国を追い越し米国に追いつく」夢も、2050年には軽々と達成することが現実味を帯びている。
  • 世界一の大国になることは百年の中国の夢。
  • 大国になるには大軍が必要。米国との戦いは持久戦になる。

みたいな好戦的な内容のようです。

2010年と言うと、リーマンショックで世界経済が悪化していたなか、中国が世界経済の救世主と言われていた頃ですね。いっぽうで中国脅威論、中国崩壊論を唱える国もありました。そういう時代背景のもと、ノリノリで出版されたんでしょう。

これが「中国の夢」の元ネタとされています。

それと「中華民族の偉大な復興」ですが、これも先に言ってた人がいます。

祖国の完全な統一を実現し、祖国の安全を守ることは、中華民族の偉大な復興の根本的基礎であり、全中国人民の揺ぎない固い意志でもある。

江沢民主席の演説「北京週報ダイジェスト日本語版」(1999-10)より引用

日本人からはジャイアンみたいに横暴に見える習近平さん。胡錦濤さんとか李克強さんがトップだったらよかったのに、なんてことを言う人もいるくらいに物騒な感じの「中国の夢」も、実は江沢民時代からずーーっと続いている思想なわけです。

 

以上、分かっているようでよく分からない「中国の夢」について、かいつまんで目次的に書いてみました。個別の中身については、勉強がてら、また別に書くかも。

 

 

コトバは生き物です。上記はあくまでも現時点で主流の言い方です。