しーらかんす式

音楽と日本語と中国語のブログ

毎日一語、中国語~通販サイトのやらせレビュー

まだ辞書に載っていない中国語の新語をひたすら書き連ねていきます

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やらせレビュー /サクラレビュー /レビュー操作 /通販サイト評価の水増し (brushing /click farming)

通販サイトでセールスランキング、レビューの点数を上げ、好意的なレビューが掲載されるよう仕向ける行為のこと。またはライバル商品に低い点数や悪いレビューを書いてジャマする行為のこと。

通販サイトによっては、実際にそこで買っていない商品でもレビューを書いたり点数をつけたりできるが、そういうサイトはもちろんのこと、購入者しかレビューできないサイトでもやらせレビューは行われているらしい。


Amazon Japanって誰でも商品レビューを書いたり点数をつけたりできますよね。でも「Amazonでの購入のみ」でレビューをしぼることは可能です。いっぽう楽天市場は購入した人しかレビューを書けません。そっか、じゃあ楽天なら本物のレビューだから安心だね!……というワケにはいかないらしんですねー。

なんだか日本語には一言で言い表せるコトバがありませんが、英語にはあるわけで、中国語にもちゃんとあります。それはー

 

 

 

网购刷单 [wǎnggòu shuādān] /放单 [fàngdān] /信用炒作 [xìnyòng chǎozuò]

"刷"は「ゲームのレベル上げ」のところで書いた通り、なんらかの行為を繰り返し行うこと。"单""单子"で注文伝票のこと。つうことで、何度も伝票を作る行為、何度も売上を計上する行為が"刷单"です。

"放单"は、たぶん"发放单子"(売上を計上する)の縮め形。

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天猫タオバオに出店しているセラーがショップ評価で行うやらせは、“刷信誉”とか“刷信用”(高評価稼ぎ)。評価が★印ではなくダイヤモンドマークなら"刷钻"、王冠マークなら"刷冠"となる。

前に取り上げたサクラレビュアーは、通販サイトのみならず、企業などに雇われてSNSやブログなどでステマ行為をする人のことでした。

これに対して通販サイトでレビュー操作をする人は"刷手"と言います。(今回は便宜的に「ニセ顧客」としておきますね。)

と、このようにして売上を水増ししたり、高評価を増やす行為全般を"信用炒作""信誉炒作"(評価操作)などと言います。

やらせレビューの基本手順

  1. セラー(売り手、ショップ)がニセ顧客を雇って、指定した通販サイトで指定した商品を買うよう依頼する
  2. ニセ顧客が実際に商品を注文して決済し、セラーに連絡する
  3. セラーはニセ顧客に代金を支払い、商品を発送する
  4. 商品を受け取ったニセ顧客が通販サイトで高評価を書き込む
  5. セラーがニセ顧客に報酬を支払う

なぜそんな面倒なことをするかと言うと、通販サイト側でも対策を取っているので、レビューを書く条件が厳しくなっているから。

中国大陸の通販サイトでは、実際に買った人しかレビューを書けません。さらに、上の「3」の手順、つまり実際に商品発送を完了させないと、レビューを投稿したり評価したりすることができないサイトが増えています。

やらせレビュー応用編

しかし、上に挙げた手順をいちいち行うのは非常に面倒。そこで、やらせレビューを請け負う業者、"刷单平台"が登場しました。

やらせレビュー業者に登録して料金を払えば、上の1~5の手順を丸投げすることができるそうですよ。こういう業者はニセ顧客をたくさん抱えていて、一人当たり100台くらいのスマホを操作させてニセ注文やニセ評価を量産しているんだって。

"刷单平台"はネット上に多数存在していて、ちょっと検索すればすぐ見つかります。違法なのに不思議だよね。

中国から郵送される謎の種

という事件?が一時期話題になっていましたが、これも後にやらせレビュー、評価操作の一環だったってことになりました。

参考:米アマゾン、外国からの植物の販売禁止 中国の「謎の種」めぐり - BBCニュース

と言うのも、上に書いたように、実際に商品発送を完了させないと、レビューを投稿したり評価したりすることができないので、なんらかの商品を発送する必要があるんだそうな。なので

  1. テキトーな誰かに、なるべく軽くて送料の安い物を発送する
  2. 発送完了→レビュー書いてねとニセ客に連絡する

という手順が編み出されたと。

しかし関係ない見ず知らずの外国人に送らなくてもいいじゃーないかと思いますが、レビュー業者にもいろいろ事情があるのかな?

この謎の種、最近では中国よりも国際郵便料金が安いベトナムとかから発送しているらしいよ!

レビュー業者もサクラレビュアー集めに苦労しているらしい

中国大陸のネットには、わりと気軽に通報ができるシステムが設置されています。レビュー業者も、あまりおかしなことをすると通報を食らう危険があるわけです。

なので、高評価ややらせレビューに必要なニセ顧客の募集は非常にリスキー。で、たとえば

  1. SNSに招待制のコミュニティーを作る
  2. SNSで知り合いを作り、コミュニティーに招待
  3. コミュニティーに人が集まったところで、ゲーム的なイベントを行い「どこどこのライブ動画で『いいね』するクエスト実施中。クリアした人に1元進呈。早い者勝ち!」などと宣伝する
  4. エストクリア者に次のクエストを提案。「今度のクリア報酬は5元です」などと報酬を上げていく
  5. 尚もクエストに参加している人にだけ「〇〇で△△を注文して決済してね!クリアした人には商品代金+報酬を支払います」などと持ちかける

みたいな感じで、ヒマそうな学生とか主婦とかをニセ顧客に仕立て上げる詐欺行為が行われています。

最初のうちは報酬も少額なので懸賞に応募するくらいの感覚で参加していた人たちも、しだいに「これって違法?」と疑い始めます。で、怖くなって「やめたい」と申し出ても、商品代金を返してもらえない、という詐欺事件が頻発しています。

参考:又是刷单骗局 女子损失两万余元 (「またやらせレビュー詐欺 女性が2万元以上失う」東方財富 2021-04)

やらせレビューは詐欺行為、犯罪です

このような動きを受けて、通販サイト側でも対策を講じています。アリババは24時間体制で監視、京東は通報システムを強化しました。

2018年には中共政府も一斉取締り、通称"网剑行动"(ネットの剣アクション)を行いました。

着力治理网络失信问题,严厉打击通过组织恶意注册、虚假交易、虚假评价、合谋寄递空包裹等方式,帮助其他经营者进行虚假或者引人误解的商业宣传。

2018网络市场监管专项行动(网剑行动)方案 (国務院)より引用

ネットの信用失墜問題に対処し、組織的な悪意ある登録、ニセの取引、ニセの評価、中身のない荷物の発送などの手段を通じた虚偽の、または誤解を生むような宣伝支援を厳しく取り締まる。

実際、ニセレビュー業者が摘発されて、20万元(約330万円)の罰金を命じられました。参考:刷单?罚了!20万! (「やらせレビューに罰金 20万元」中国質量新聞 2020-09)

すごいですねー、大陸。「大陸では規制が厳しくなっているから、Amazon Japanに稼ぎに来たよ!」とか言ってる中国人セラーがいましたが、大陸に比べれば日本はユルユル、やりたい放題なんでしょうね。

 

 

コトバは生き物です。上記はあくまでも現時点で主流の言い方です。