毎日一語、中国語～テドロス事務局長（WHO）
まだ辞書に載っていない中国語の新語をひたすら書き連ねていきます
テドロス ／テドロス・アダノム・ゲブレイェソス（Tedros Adhanom Ghebreyesus）
WHO＝世界保健機関の8代目事務局長。2020年1月の新型コロナウイルス感染症の蔓延以降、一躍有名になった。
エチオピア出身のティグリニャ人で政治家、学者、公衆衛生の専門家。エチオピアの保健大臣、外務大臣を経て、2016年にWHO事務局長に就任した。
科学誌"Nature"から、激しい批判を浴びながらも各国をまとめてCOVID-19の脅威に対処した
として「2020今年の重要人物10人」に選出された。
エチオピアには苗字の概念がなく、最初のが本人の名前、2番目が父親の名前、3番目が祖父の名前だそうです。なので、テドロスさんと呼ばれるわけですね。
テドロスさん、新型コロナ関連の発言は一貫性がなくて中共に操られてるようにしか見えませんでしたが、Wikipediaを見る限り相当なやり手です。決して無能ではありません。
谭德塞 ／特沃德罗斯·阿达诺姆·盖布雷耶苏斯
"谭德塞"って、中国人の名前にしか見えませんがテドロスさんのことです。当初は"特沃德罗斯"という音訳のほうで報道されていましたが、現在は"谭德塞"です。大陸、台湾、香港その他海外メディアの中国語版も、すべて"谭德塞"なので、これだけ覚えておけばOK。
珍しく統一されているのはなぜかと言うと、WHOの公式サイトも"谭德塞"だから。
参考：世卫组织网站 （WHO公式サイト中国語版）
事務総長と事務局長の違い
WHO事務局長は、"世界卫生组织秘书长”だと思っていたら、"秘书长”ではなくて"总干事"でした。おっかしいなー、10年くらい前は事務局長＝"秘书长”だった気がするんだけど……。で、調べてみました。
になってるみたいですね。テドロスさんは"世卫组织总干事"ってことで！
ただし大陸メディアは"世卫组织总干事谭德塞"で徹底してますが、台湾、香港は"秘書長"が多いようです。ってか、"世衛秘書譚德塞"とか"世衛譚德塞"だけだったりとか"譚德塞"だけだったりとかしてます。
ふつう、記事中で初出の時は肩書付きで"世衛秘書長譚德塞"、2回目以降は"譚德塞秘書長"とか"譚德塞"にするんですが、テドロスさんの場合、しょっぱなから"譚德塞"と呼び捨てにされていたり、"長"を抜かして"秘書譚德塞"にされてたりしてます。特に台湾メディア。
このように、一部？ではかなり心証悪いと思われるテドロスさん。じゃあ中国語圏での評価はどうなのかと言うと、これはもう大陸と大陸以外で180度違います。
テドロスさんと大陸は相思相愛
中国人みたいな名前がイイ
当初はどうして中国名なの？と思われていたようですが、"谭德塞"＝「たんだーさい」っぽい音なので、テドロスの音訳と言えなくもないです。
でも、だったら（たんだーさい）ではなく（たんだーすー）と読んであげたほうが「テドロス」っぽいと思うのですが（たんだーさい）のほうが、より中国人っぽいような気もします。「人生万事塞翁が馬」＝"塞翁失马"の"塞"だし。
"谭"は中国人の姓に使われる文字です。譚雄（三國志）、譚嗣同（清末の革命家）、譚詠麟（香港の大御所スター）などが思い浮かびます。
大陸ネット民によれば、「今や中国人は世界中で活躍している。テドロス氏も以前から中国人と仕事をする機会があったはずなので、中国人に覚えてもらい、親しみを持ってもらうため、"谭德塞"という中国名を考案したのかもしれない。テドロス氏を見習って、世界中の人が中国名を名乗るべき」だそうです。「私の姓も譚。親近感を覚える」というカキコもありました。
まあ、あまりにもナチュラルな名前なので、中国語ネーティブに相談したんでしょう。それか、「いっそ"谭德塞"になっちゃいなよ！」と勧められたか。
中国人ってちょっと親しくなると、「中国名を名乗れば？」とか「中国名考えてあげようか」とか言ってきませんか？私は何度か言われたことあります。
客観的で公正な信頼できる人物
テドロスさんは大陸メディアの報道でも、びっくりするくらい人気者です。ってか高評価です。
- いい感じの見出しの例
记者眼中的谭德塞：敢于直面挑战的世卫掌门人 （北京晩報）
「記者が見たテドロス氏、果敢に試練に立ち向かうWHOのトップ」
あとは
- 中国の優秀さ、素晴らしさをよく理解している
- 欧米のようにフェイクニュースを言いふらして中国を攻撃したりしない
- 中国を信頼している、中国もWHOを信頼しているので協力してコロナに勝とう
とかね。
SNSや記事のコメント欄での評価も上々です。「礼節をもって中国に接するテドロスとWHOには、中国も礼節をもって対応しよう。欧米は我々に嫉妬してろ」みたいな。
テドロスさん、MAXレベルの中共ヨイショ
2020年1月28日、急遽訪中したテドロスさん。武漢に乗り込むのかと思いきや、ただの北京詣ででした。
あくまで中共報道ベースですが、その時の発言。
中国体制之有力和中国举措之有效世所罕见，令人敬佩。
王毅会见世界卫生组织总干事谭德塞-新华网 より引用
「中国の体制の力強さと中国の措置の有効性は、世界に類を見ないものだと感服している」
もうね、中国共産党体制に感服しちゃってます。これは王毅外相もニコニコでしょ。このテドロス王毅会談では、こうも言っています。
現在中国にいる外国人の退避を希望している国があることを確認しているが、WHOとしてはこれを推奨しない。現在の情勢下で冷静に対応すべきだ。WHOは中国政府には新型コロナウイルスの感染を管理・抑制できる能力があると確信している
繰り返しますが2020年1月28日の発言です。1月23日に武漢市が封鎖され、その後世界各国でぽつりぽつりと感染者が出始めていた頃です。
そんな中、邦人帰国に尽力していた日本政府はよく頑張った！と思うんですよ。
そのいっぽうで、日本国内では大陸の観光客があふれてたり、マスクを根こそぎ買って行かれたりしてましたけどね('A`)
テドロスさん、大陸以外では全く人気なし
人気ないどころかWHOもひっくるめて全く信用されてません。
各国メディアに批判されるテドロスさん
2021年1月、WHOの武漢調査チームに関するテドロス発言については
- WHO調査チームがスムーズに武漢入りできなかった時
「中国に失望した」→ものすごく珍しくイイこと言った - WHO武漢調査チームが「研究所からウイルスが流出した可能性は低い」と発表した時
「調査チームはWHOの人間ではない、WHOは仲介しただけ」→中国にコビ売って言いつくろってる - WHO武漢調査チームが「中国が詳細データを出してくれない」と発表した時
「専門家個人が言ってるだけ、WHOの意見ではない」→また中国にコビ売ってる、無責任！ - WHO武漢調査チームが「初期からパンデミックの可能性があった」と発表した時
「だから武漢調査チームにWHO職員は2人しかいないの！後は各国の専門家なの！そいつらが勝手に言ってるんです」→いい加減にしろ、無責任きわまりない
のように、いちいち批判（ツッコミ）されています。その他
- 言うことがコロコロ変わる
- 各国の対応を批判するくせに、中国の初動については相変わらず「素晴らしかった」と褒めている。要するにテドロスは能無し
- テドロス「最大の脅威はウイルスではない、世界が連帯していないことこそが脅威だ」→あんたに指導力がないだけ
などなど、もはや何を言っても反感買ってます。何事にも信頼って大切なんだね……。
参考：面对查源结果遭质疑 谭德塞澄清世卫只是中间人 专家不是世卫人（発生源調査結果に対する質問に、テドロス氏が「WHOは仲介しただけ、専門家はWHOの人間ではない」と明かす）、美質疑赴中調查結論 譚德塞 : 非世衛主責（訪中調査結果に関する米国の質問に、テドロス氏「WHOの主管ではない」）、新冠疫情：世衛警告發達國家囤積疫苗 將造成「災難性的道德失敗」 - BBC News 中文（新型コロナ感染状況 WHOが先進国のワクチン在庫に警告「災難的な道徳上の失敗だ」）
今見ると興味深い、2020年1月のテドロス習近平会談
2020月1月、武漢封鎖を受けて大陸に飛んだと思ったら、武漢には向かわず北京詣でをしただけだったテドロスさん。その日のCCTV新聞聯播がYouTubeにあったので観てみました。
《新闻联播》习近平会见世界卫生组织总干事谭德塞 20200128 | CCTV
この時は、国境封鎖したくなかったんですよね、習近平さん。あと、自身は武漢に行ってなかったんだよね、李克強さんは行ったけど。コロナ対策の指揮なんか大してしてなかったんだよね。
そんな中、来てくれた相思相愛のテドロスさんに対し、習近平さんはこんなこと言ってました。
中方欢迎世界卫生组织参与本次疫情防控工作，世界卫生组织专家已赴武汉进行实地考察。
「CCTV新聞聯播」より引用
中国はWHOの関与を歓迎する。WHOが組織した専門家が、すでに武漢で現地視察を行っている。（しーらかんす訳）
え？そうだっけ？？
ググってみると次のような流れでした。
- 2020年1月20～21日 WHO、最初の武漢訪問
中国と西太平洋地域出身のWHO専門家が武漢を視察。ヒトヒト感染の可能性を指摘 - 2020年1月23
武漢封鎖 - 2020年1月28日
テドロスさん北京訪問、日本政府の最初のチャーター便が武漢に到着 - 2020年2月16～24日 WHO、2回目の武漢訪問
米、中、独、日、韓、ナイジェリア、ロシア、シンガポール、カナダ出身の専門家チームが武漢を訪問 - 2020年2月24日
WHOと欧州疾病予防管理センターの専門家チームがイタリアを訪問 - 2020年3月11日
WHOが新型コロナウイルスのパンデミックを宣言
参考：発生からパンデミックまで、WHOの新型コロナ対応 時系列で振り返る 写真6枚 国際ニュース：AFPBB News、綱渡りだった「武漢邦人救出ミッション」の全舞台裏
本当でした。WHOは2021年1月の調査より前に、すでに2回武漢に行ってたんですね。そしてWHOがパンデミックと言いだしたのが1月20日の調査から1か月半ほど後の3月11日。
これは確かに時間かかり過ぎ。
最後に、なぜテドロスさんがこうも中共びいきなのかを分析した記事。
私、基本的にお人好しなもんで、この記事を読んでちょっぴりテドロスさんに同情しちゃいました。でもこれもテドロスさんの作戦かもしれない('A`)
コトバは生き物です。上記はあくまでも現時点で主流の言い方です。
