毎日一語、中国語~カスタマイズ、パーソナライズ、セミオーダー
まだ辞書に載っていない中国語の新語をひたすら書き連ねていきます
カスタマイズ/オーダーメイド/パーソナライズオーダーメイド/セミオーダーメイド(custom-made)
個人の用途や趣味に合わせて既存の製品を多少変更すること、またはその製品。
大陸
定制 /订制 /订做 /个性定制 /私人订制
香港、台湾
客製化
"订制"は以前からある言葉。"按订单制造"(受注生産=MTO)の縮め形として使われていたと思う。その"订制"が、発音が同じ"定制"とも書かれるようになり、最近は大陸で新しいオシャレ用語のような感じで多用され始めた。"订制"、"定制"、"订做"、"定做"は、ほぼ同じ意味で使われているが、なんとなく"定制"が多い気がする。
"定制"は動詞で、カスタマイズする、お客さんの要望に応じて製造する(加工する)の意味。
- 定制化
カスタマイズ - 定制产品、定制商品、定制货
カスタマイズ製品、カスタマイズ商品 - 定制服务
カスタマイズサービス - 定制经济
カスタマイズサービス経済、カスタマイズブーム
のように他の単語とくっつきます。
"个性"、"私人"は「パーソナル」なので、"个性定制"("个性化定制"でもOK)、"私人定制"は「パーソナライズなカスタマイズをする」となる。どっちやねん!
何をカスタマイズするの?
もう何でもあり。代表的なものは
- マンション:専属美容師の派遣、施設の利用など好きなサービスを選べる
- インテリア雑貨、家具:部屋に合ったサイズや色をオーダー
- アパレル:高級スーツのオーダーメイドから靴下のロゴプリントまで、各種のカスタマイズ
- 雑貨:ギフト用の包装材、スマホケース、マグカップ、文房具、マスクなどのカスタマイズ
- 傘:好きな絵や文字を印刷
- 食器:デザインをカスタマイズしたり、名入れ、写真印刷などができる
- 靴:革靴やスニーカーなどの材質やデザインをカスタマイズ
- 宝飾品、腕時計、アクセサリー:刻印サービス、名入れサービス
- 化粧品:ケースに文字や図案を入れるサービス
- スキンケア用品:肌質や状態に合わせてカスタマイズ
- サプリメント:体調や希望に応じて自分専用のサプリメントをカスタマイズ
- お酒:高級酒のボトルに写真や文字を入れられる
- お茶:好みに応じて茶葉や加工法、包装をカスタマイズ
- 料理:レストランやデリバリーの豪華な食事をカスタマイズ
- パソコン用の高級キーボード:キーの色をカスタマイズ
- 自動車:好みの色、外装、内装をカスタマイズ
- 鉄道:オシャレな欧風車両を走らせる
- ギフト:もらう側が中身をカスタマイズ
- 医療:遺伝子診療、個人の事情に合わせた診療をカスタマイズ
- 送迎サービス:好きな時間、好きな距離をカスタマイズ
- 旅行:ツアーの内容をカスタマイズ
- 曲、音楽:自分だけの曲を作ってもらえる
などなど、有形無形のカスタマイズが花盛りです。ってか、それって前からあるよね?別に新しくもないよね?というものも混ざっていますが、何だか流行っているみたいだし、ウチも"定制"ってことにしとくか!みたいな大陸特有の乗っかり癖、パクリ癖が出ちゃっただけかもしれません。
どうして大陸でカスタマイズが人気なのか
人民の生活水準があがって可処分所得が増えたからでしょうね。
名入れや刻印サービスみたいなカスタマイズ文化は、香港や台湾では、以前から普通に存在していました。DIYブームみたいなのもだいぶ前からあったと記憶しています。
大陸でも今世紀に入った頃、スーツやチャイナドレスのオーダーメイドはあったし、カスタムカーを乗り回している人もいました。でもそんなものを利用しているのは、大都市部のごくごく一部のお金持ちか外国人(香港人含む)でしたね。
カスタマイズ商品を買うような層は大陸にどれくらいるのか
+α的な趣味に走れる富裕層は、次のような人たち。2019年の統計です。
- 月収20,000元(約33万円)超
0.05%=約70万人 - 月収3,000~20,000元(約4万9000円~33万円)
16.29%=約2億2700万人
日本円で4万9000円~と聞くと少ないと思われるかもしれませんが、大陸では共稼ぎが当たり前なので家計として単純に見れば倍。それにこのへんの層になると、投資の儲けや家賃収入を得ている人も多そう。
そんな富裕層が2億2770万人……相変わらずすごい数だよね。そりゃ日本企業は大陸から離れられないワケですよ。いっぽう、月収1,000元(約16,300円)以下の人口はなんと6億人!とはいえ、引退したお年寄りや就学中のキッズなどもそこに入っている計算と思われます。
参考:统计局回应6亿人月收入1000元:有数据印证(財新網)
「統計局が6億人の月収が1000元と回答 データの裏付けあり」
カスタマイズの何がそんなに魅力的なのか
最初の解釈に高級感があった
大陸版Wikipedia、百度百科を見てみると、"定制"の起源は「フランスのオートクチュール」とか「イギリスのサヴィル・ロウ」とか書いてあります。どっちやねん!
ともあれ発端は高級ファッションのオーダーメイド、テイラーメイドだったわけです。
私、冒頭で"定制"はもともと"按订单制造"(受注生産)の縮め形と書きましたが、目下流行中の"定制"は、「受注生産」とは違う、ハイレベルな高級感、特別感を想起させる言葉のようです。
また、このように、製造者が顧客にカスタマイズ商品を直接売る方式は、大陸におけるD2C(Direct to Consumer。メーカー直販)ビジネスモデルの始まりと評価されています。
大陸富裕層が新たなゲームに群がった
大陸では、スニーカー、フィギュアなどを買っておき、値上がりしたところで売るという投資法が流行中。当然ながらカスタマイズできるブランドスニーカーが投資のターゲットになっています。
参考:耐克专属定制-耐克(Nike)中国官网(NIKEのカスタマイズ、NIKE BY YOU公式サイト)、White Atelier by CONVERSE 慶祝兩周年 繼續與日本插畫家長場雄推出聯乘產品(コンバースのカスタマイズに関する情報)
単純に、自分だけのオリジナリティあふれる商品を所有して、写真をSNSに投稿することで虚栄心を満たす人たちも増加中。そのために+αのおカネを出し、マイカーやブランド品など高額な商品から、Tシャツやマグカップにいたるまで、カスタマイズブームが起きています。
おカネを持っている人は持っているということ。
わが国でも新型コロナでも収入が減っていない層が約7割いるそうです。
参考:新型コロナで家庭の収入「減った」が24% NHK世論調査 | 新型コロナ 経済影響 | NHKニュース
大陸富裕層にも収入が減らない層がそこそこいるとすれば、これまで国内外の旅行やレジャーなどのアウトドアで使っていたおカネが、新型コロナの影響でカスタマイズ消費に向かっているのかもしれません。
コトバは生き物です。上記はあくまでも現時点で主流の言い方です。