毎日一語、中国語~投げ銭(ネット用語)
まだ辞書に載っていない中国語の新語をひたすら書き連ねていきます
投げ銭/ネット投げ銭(social tipping /virtual gifting /online gifting)
なげせん
インターネット上で行われる活動に対して、視聴者が報酬を渡すこと。
本来は路上で行われるパフォーマンスを鑑賞した通行人が、パフォーマーに報酬を支払うことだが、ネットの投げ銭では、その行為がネット上で行われる。一般的にはライブ配信中に、視聴者が配信者のパフォーマンスを称賛するために、配信サイトのルールに基づいて報酬を渡すことを言う。投げ銭の方法は、現金のクレジットカード決済だったり、サイト内のポイントやアイテム(換金可)だったりととさまざま。
中国大陸では2017年頃から盛り上がってましたが、新型コロナ以降、わが国でも盛んらしいですね。
配信者にとっては、収入を得られる、モチベーションが上がるなどのメリットがあり、視聴者にとっては、目立てる、配信者に感謝されてうれしいなどのメリットがあるそうで、まさにwin-winですな。
中国大陸
打赏 /礼物 /礼物盒 /红包
台湾
斗內 /抖內
投げ銭をするサイトや報酬受け渡しのシステムによって違いはあれど、大陸では"打赏"が一般的です。
こんな感じの"赏"の字を"打"するので"打赏" ってこと。清代からある言葉で、身分の高い人が配下に金銭や物を与えることだそうですよ。
"打赏"は動詞または名詞として使われています。
動詞だったら
名詞だったら
のように使います。
"礼物"はギフトで、"礼物盒"はギフトボックス。"红包"は赤い紙に包んだ伝統的なご祝儀とかチップのこと。サイトによっては、こっちの言い方です。
これらは名詞なので、「投げ銭する」なら"投"、"送"、"赠送"、"发"、"开"などを前に付けます。逆に「投げ銭を受け取る」、「投げ銭を回収する」なら"领"、"领取"、"抢" などを前に付けます。
でもサイトやシステムによってそれぞれ名称が違うので、一般的に語る場合は"投钱"、"打款"でもOK。
"打赏"は台湾でも使われているようですが、ネット投げ銭については"斗內"、"抖內"らしいですね。英語の"donate"(寄付)の音訳。
中国大陸独自の投げ銭文化
昨今「投げ銭」と聞いてイメージするのはやはりライブ配信やゲーム実況ですが、大陸ではありとあらゆるネットコンテンツで"打赏"が行われています。
動画サイトやブログの投げ銭
大陸では「いいね」とか「good」の進化版的な感じで"打赏"を設置してるんですね。動画やブログの運営サイトが用意した投げ銭システムを利用するだけでなく、アリペイやWeChatペイの投げ銭機能を挿入したり、QRコードを表示したり、やり方はさまざまです。
配達員さんへの投げ銭
フードデリバリーの配達員さんへの投げ銭も一般化しています。
大手デリバリーサービスの美団では、配達員さんの評価ページに"打赏红包"機能が設置されているので、配達員さんのサービスが素晴らしくて通常の高評価では足りない!と思えば投げ銭してもいいそうです。
リアル世界のネット投げ銭
そして最近登場したのが、リアル社会での投げ銭。
レストランやホテル、観光施設の従業員さんがQRコードを提示して、チップくださいアピールしているそうなんですよ。
投げ銭専用のQRコードを制服に貼りつけたり、首からぶら下げたりしている店員さんに、「あ、ちょっと待って」とか言いつつスマホを向けてスキャンするんでしょうか。おかしな風景だね。
この現象をプレッシャーに感じるお客さんも多いとか。別にふつーに接客されただけなのに、なんかスキャンしないと悪い感じがしてくる、みたいなね。
チップを出さないまでも「ありがとう」の気持ちだけでも伝えたい!というお客さんのために、"点赞"(いいね)を併設している場合もあります。チップや「いいね」の数は自動集計されているので、従業員さんの"点赞打赏"ランキングを一般公開しているお店もあるんだって。
なんか大変な世界ですねえ。"点赞打赏"もらえない=ダメ従業員の烙印押されそう。
ステマ、マネロン……悪用が進む投げ銭
このように、大陸で大いに広まっているネット投げ銭システム。
ライブMC同士がお互いに投げ銭し合ってランキグを上げたり、あらかじめサクラを仕込んで投げ銭させたりなど、マナー違反行為が横行しているそうです。
また、親が気づかないうちに、キッズ達がライブ配信に大金を投じてしまう事件も報道されています。
参考:中国で11歳女児が動画配信主に約3200万円の投げ銭をした末路|NEWSポストセブン、未成年人打赏网络主播事件频发(新浪)「未成年の投げ銭事件が頻発」
そればかりか、アリペイやWeChatペイの投げ銭機能を利用してSNSコミュニティーに一般人を誘導し、通販サイトに出品した商品の売上数を偽造したり高評価を水増ししたりする不正行為、ついでにマネーロンダリングもできちゃった!みたいな犯罪が多発しているんだとか。
こういう犯罪、日本に上陸してきそうだね、と思ったら、すでに上陸してましたー。
参考:電子マネー資金洗浄が急増 届け出3913件、警察庁: 日本経済新聞(2020-11)
そして国家広電総局が登場!
国家广播电视总局 公告公示 国家广播电视总局关于加强网络秀场直播和电商直播管理的通知(中国政府網 2020-11)「ライブ配信のMCとライブコマースの管理強化に関する通知」
- ライブ配信視聴者の実名登録を義務付けること
- 未成年ユーザーに投げ銭機能を提供しないこと
- サイト運営者は1回で投げ銭できる金額、1日あたり、1か月あたりの投げ銭金額に上限を設けること
- 投げ銭機能設置中、MCに不正行為があった場合、サイト側はユーザーに投げ銭を返還すること
- 高額の投げ銭を暗示、誘導、奨励したり、未成年ユーザーの投げ銭を勧誘したMCに対し、厳格な措置を講じること
などの規制を強化中です。
そんな中、ニコ動からパクった機能で特許申請した過去のあるビリビリが、新たな特許を取りました。
涨粉利器!B站发明“红包弹幕”:发弹幕同时发红包(テンセントニュース 2021-01)
「集客兵器!ビリビリ コメントと投げ銭を一体化した『投げ銭弾幕』を発明」
投げ銭ブームの勢い、まだまだ止まりません。
コトバは生き物です。上記はあくまでも現時点で主流の言い方です。