毎日一語、中国語~あてこすりを言う
まだ辞書に載っていない中国語の新語をひたすら書き連ねていきます
あてこする/あてつける/あてこすりを言う (insinuation)
遠回しにイヤミを言うこと。
通訳案内士試験の日中訳問題で、10年に1回くらい出題される言葉でもある。
捉鸡骂狗 /指东骂西 /指山说磨 /暗箭伤人 /指桑骂槐 /含沙射影 /旁敲侧击 /影射攻击 /借古讽今
四文字コトバだけに限定しましたが、やたらいっぱいありますねー。"指桑骂槐"以降は日中/中日辞書にも載っていると思います。
では「あてこする」の中国語訳を書きなさい、という出題に対し、どう解答すればいいんでしょう?
"捉鶏罵狗"…ニワトリとイヌで言うパターン
ニワトリをつかみつつ、イヌを叱っています。ニワトリ、可哀想ですね。この言葉はバリエーションが豊富です。
"指〇打〇"型
"指狗打鸡"
イヌを指しつつ、ニワトリを叩いています。ニワトリ、可哀想ですね。
"指〇罵〇"型
"指鸡骂犬" /"指鸡骂狗"
イヌを指しつつ、ニワトリを叱っています。ニワトリ、可哀想ですね。
"打〇罵〇"型
"打鸡骂狗"
ニワトリを叩きつつ、イヌを叱っています。ニワトリ、可哀想ですね。
いずれにしろニワトリは可哀想でした。身分的にはイヌ>>>>ニワトリなんでしょうか。
どれも「あてこする」の中国語訳でOKでしょう。
ニワトリとイヌが登場する慣用句は他にもいろいろあります。中国時代劇好きにはお馴染みの、"鸡犬不留" (皆殺しにする)とかね。昔からニワトリとイヌは身近な家畜だったということだね。
"指東罵西"…"指"で始まるパターン
"指狗打鸡"は上にもありました。何かを指差しつつ、別の行動をするパターンの言い方です。
"指东骂西"
東を指しつつ、西の悪口を言っています。
"指桑骂槐"/"指桑说槐"
クワを指しつつ、エンジュの悪口を言っています。またはエンジュの話をしています。
"指山说磨"
山を指しつつ、砥石の話をしています。
う~む、"指〇说〇"、"指〇骂〇"型の表現はまだまだありそうですね。
エンジュの木は中国人にとって身近な木みたいですよ。北京の景山公園には、明朝最後の皇帝にちなむエンジュの木がありますよね。
どれも「あてこする」の中国語訳でよさそうですが、"指〇说〇"型の場合、文脈によってはただ遠回しに、回りくどい言い方をしているだけの場合もあります。
暗箭傷人
"暗箭伤人"
あらぬ悪口を言って他人を傷つけています。
これも「あてこする」の中国語訳でよさそうです。
含沙射影
"含沙射影"
はっきりとは言わず、それとなく皮肉を言っています。小学館、大修館の中日辞書に載っています。これは「あてこする」の中国語でいいですね。
《搜神记》 (捜神記)という4世紀に書かれた物語集に出てくる妖怪の説明文が出典です。「"蜮" は水中にいて、人の影に砂を吹きかける。すると、その人は病死する」らしいです。こわっ。
"蜮"は3本脚の怪虫だそうですよ。キモチワルイのでイラストは貼りません。見たい人は画像検索してみてね!
"含沙射影"は大陸の人気メディアミックス『闘羅大陸』に登場する隠し武器の名前にもなっています。
旁敲側擊
"旁敲侧击"/"分敲侧击"
遠回しに皮肉を言っています。ABAB型の四文字コトバで、"旁侧 敲击"「傍らから攻撃する」=「遠回しに攻撃する」ということ。
小学館の中日辞書に「あてこする」と載っているし、ぴったりですね。
影射攻撃
"影射攻击"
これは成語ではなくてただの四文字コトバです。
"影射"は、ほのめかすこと。で、攻撃するわけですから、「あてこする」ってこと。
借古諷今
"借古讽今"
この「あてこする」は範囲限定ですが、オマケでご紹介。
過去の出来事を持ち出して批判する、過去をネタにあてこすりを言う、という意味です。趙立堅報道官の得意技です。ってか中共の戦狼外交の常套手段か!
小学館の中日辞書には「昔のことを評論するのにかこつけて現代を批判すること」と出ています。
ということで、通訳案内士試験(中国語)にたま~に出題される「あてこする」でした。"借古讽今"以外なら、どれを書いてもいいんじゃないかと思います。
でもまあ別に四文字コトバで書かなくても、"委婉地挖苦别人" とか"拐弯抹角地讽刺别人" とかのほうが分かりやすいよね!
コトバは生き物です。上記はあくまでも現時点で主流の言い方です。