毎日一語、中国語~好感度ランキング
まだ辞書に載っていない中国語の新語をひたすら書き連ねていきます
好感度ランキング/注目度/人気
こうかんどらんきんぐ/ちゅうもくど/にんき
何らかの指標や調査結果などを集計してランク付けするのって、わが国ではフツーに行われていますよね。ヒット曲のランキングから始まったオリコンは、今や幅広いジャンルのランキングを発表しています。
タレントなど有名人の好感度調査ならビデオリサーチが有名。この好感度に基づいて、テレビなどメディアは番組出演者を決定し、企業は広告に起用するタレントを選んでいるわけです。
たとえば2020年8月のビデオリサーチ「タレントイメージ調査」はこんな感じ。
テレビ、ラジオや広告と完全に連動しています。
このように、好感度ランキングはビジネスにとっても重要な指標。このへんのとこ、中国大陸ではいったいどうなってるんでしょーか。
流量 /热度
このところ大陸ネットで非常によく見かけるコトバです。どっちも辞書に載っていますが、使われてる意味はだいぶ違ってるんだよね。
"流量"
本来の意味は日本語と一緒で、水が流れる量とかの「流量」。でもネットで言うところの"流量"は、「通信量」の意味で使われています。
"流量"は、まんま「好感度」のことっぽい
昨今の大陸はネット社会、ってかスマホ社会。大陸人民たちは毎日平均5時間以上スマホ画面を眺めてるっつー説もあるくらいで、テレビ番組の視聴率が語られることは皆無。もっぱら"流量"が好感度や人気のバロメーターとなっています。
でも
- "流量"が大きい=通信量が大きい、ならSNSとかより動画が大きくなるんじゃない?
- スキャンダルとかで炎上すれば"流量"が大きくなるから「好感度」とは言えないんじゃない?
と思いますよね?
そのへんはわりといい加減で、"流量"と言いつつ、そこにはページビュー、訪問者数、フォロワー数、「いいね」数などが含まれているようです。だいたい、ネットと言ってもさまざまな動画サイト、SNS、ブログ、検索サイトなどが多数あるワケで、それを全部集計しているような組織はありません、たぶん。
それでもニーズはあるらしいランキング
それでも自分の好きな芸能人がどれくらい人気なのか、世間からどう思われてるのか、ファンとしては気になるところ。検索数とか話題の投稿数とか投げ銭額とかフォロワー数とか再生数とか「いいね」の数とか……いろんな数値に興味津々な人は少なくありません。
で、"明星顶级流量排行榜"(スター"流量"ランキング)みたいなブログや記事をいっぱい見かけるんだけど、どうもぼくのかんがえたさいきょうのらんきんぐみたいな感じなんだよね。"不分排名先后"(順不同)とか書いてあったりするし。
で、なぜか炎上したり、嫌われてるけど注目されてるような人は一切出てきません。もしもフツーに集計したならば、2020年、大陸で最も"流量"を稼いだ人物はトランプ元大統領だと思うけど!
VLinkageの「タレント新メディア指数」
そんな混沌とした大陸ランキング市場に登場したのが"VLinkage"という組織。エンタメ業界専門のデータ、マーケティング&コンサル企業と称しているので、オリコン的なものを狙っていそう。VLinkageのランキングは、ほうぼうのブログや記事で引用されてます。公式サイト:Vlinkage - 专业娱乐数据和营销顾问
VLinkageが毎日発表しているのが"艺人新媒体指数"。タレントの出演ドラマ再生回数、Weiboと豆瓣のデータ、検索数を集計してランク付けしているそうです。
2020年の年間ランキングはこんな感じ!
- 朱一龙
1988年生まれ、湖北省出身の俳優、歌手 - 肖战
1991年生まれ、重慶出身の俳優、歌手でX玖少年团のメンバー - 王一博
1997年生まれ、河南省出身の歌手、俳優、バイクレーサーでUNIQのメンバー - 迪丽热巴
1992年生まれ、新疆ウイグル自治区出身のウイグル人で女優、歌手 - 任嘉伦
1989年、山東省生まれの俳優 - 易烊千玺
2000年生まれ、湖南省出身の俳優、歌手、ダンサーでTFBOYSのメンバー - 谭松韵
1990年生まれ、四川省出身の女優 - 杨紫
1992生まれ、北京出身の女優 - 赵丽颖
1987年生まれ、河北省出身の女優、歌手 - 李沁
1990年生まれ、江蘇省出身の女優
うーん、やっぱり炎上+嫌われ者で"流量"が増えてる人は網羅されてなさそうです。あと、昨今タレント以上に影響力があると言われているネットセレブやライブMCは入ってません。結局のところ、なんらかのフィルターをかけたランキング。つまり好感度のランキングってことなんでしょうね。
参考:2020年にGoogle Japanでよく検索された人名
やはりこっちのほうが真実を反映してるように思える。大陸でもこういうの出してほしいなぁ。
"热度"
"热度"は、もともと高温の温度、熱意、情熱、意気込みという意味のコトバ。それが最近ではネットでの人気、注目度の意味で使われています。なので"网络热度"とも言われてます。
少し前は日本語由来の"人气"をよく聞きましたが、昨今は"热度"が旬なんだねぇ。
"热度"は「注目度」、「人気」、「ランキング」のことらしい
"热度"は、サイトごとに発表されていたりします。
それを多い順に並べれば、"排行榜"(ランキング)になります。"热度榜"なんてコトバも見かけるようになりました。
具体的には以下の要素を集計して、"热度"をランキングしているようですよ。
- 百度のような検索サイトは、検索回数
- SNSやブログや記事の場合は、ページビュー、コメント数、引用・転載された数、「いいね」数など
- Tik Tok含む動画サイトなら再生回数、ブックマーク数、フォロワー数、「いいね」数など
たとえば検索最大手の百度は、ランキングページを設置しています。リアルタイムでジャンルごとの検索ランキングを参照できるので、けっこー面白い。参考:百度搜索风云榜
前述のVLinkageのアニメランキングを見ると、国産アニメしか載っていないが、百度で見たら
1位 向日葵の教会と長い夏休み(アニメ?)
2位 ワンピース
5位 進撃の巨人
6位 ワンパンマン
7位 NARUTO
8位 名探偵コナン
10位 ウルトラマン(特撮も入るんですね)
と、日本の作品がいっぱい入ってた!(2021年4月25日時点)
まあ、百度傘下の動画サイト、iQIYIで公開されてる作品がメインなようですけど。
大陸人民に信用されてない好感度ランキング
芸能人やネットセレブのファンたちは、"流量"や"热度"に一喜一憂していますが、そうでもない一般人民は、わりと冷めた目で見ています。
- "流量"なんてどうせ操作されてる
- "流量"はカネで売買されてる
- 真実の"流量"を知りたいなら、広告の数を見たほうが早い
という意見もちらほら。やっぱり信用ないんですねえ。
実際、"炒流量"、"炒热度"("炒" =売買する、操作する)という新語も登場しました。
しかし中共政府が誇るビッグデータ技術をもってすれば、いろんなデータを画期的な方法で集計した各種ランキングを簡単に出せるんじゃないか?もしかすると、あえてやってないのかな?とんでもない人が、実はすごい人気者で影響力を持ってる、とか知られたらマズかったりするのかな?などと勘繰ったりして。
なんと!あのBillboardが中国に進出していた!
今さら気づいたんですけど、米国を代表する音楽チャート誌「ビルボード」が大陸に進出してたんですねー。Billboard China公式サイト:Billboard中国 - Billboard China,Billboard公告牌
2016年頃から全米HOT100ならぬ"中国公告牌音乐单曲榜"というチャートをWeiboとTik Tokで発表しているそうですよ。
ビルボード・チャイナさんによると
- 放送局でのオンエア数 30%
- ストリーミングデータ 30%
- セールス+「いいね」数など 40%
を集計したチャートとのことです。
"流量"の要素が「いいね」数くらいしかない?ストリーミングってのはテンセントミュージックとかだと思われますが、これは"流量"に入るのか?それともセールス?
まあいずれにしろセールス重視のようですね。そのせいか、「ビルボード・チャイナ」は大陸でまったく浸透してないみたい。
こういう伝統の手法、大陸では流行らないんでしょーか。逆に大陸のエンタメ好きさんたちは、「日本の芸能人は、どうして"流量"を気にしてないの?」と不思議がってるみたいよ。
コトバは生き物です。上記はあくまでも現時点で主流の言い方です。