しーらかんす式

音楽と日本語と中国語のブログ

毎日一語、中国語~集団免疫

まだ辞書に載っていない中国語の新語をひたすら書き連ねていきます

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集団免疫 (herd immunity)

しゅうだんめんえき

流行中のウイルスや細菌に対して免疫を持っている人が増えれば、感染者が出ても他の人にうつりにくくなり、感染が広がらなくなる、という状態のこと。

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新型コロナウイルスの場合、ワクチンを接種した人が増えて集団免疫が出来上がることが期待されています。ただしワクチンで集団免疫が実現できるかどうかは未知数らしいですね。

WHO(世界保健機関)は2021年1月に、集団免疫の状態になるには正確には分からないものの世界の人口の70%を超える人がワクチンを接種する必要があるとしていました。日本ではなんとなく「60%で集団免疫獲得」みたいに言ってますけどー。

 

 

 

中国大陸
免疫屏障 [miǎnyì píngzhàng] 群体免疫屏障 [qúntǐ miǎnyì píngzhàng]

台湾
群體免疫 [qúntǐ miǎnyì]

中国大陸でよく使われているのが"免疫屏障"、直訳すると「免疫バリア」というコトバ。人体の皮膚や粘膜がウイルスや細菌を防御する仕組みのことです。

ところが最近になって、この"免疫屏障"を「集団免疫」の意味で使い始めました。でもさすがに変だと思ったのか、"群体免疫屏障"と言ってみたり"群体免疫"と言ってみたりしています。

参考:时评丨聚“一臂之力”筑免疫屏障(「一臂の力を集めて"免疫屏障"を築こう」CCTV 2021-04)

腕に注射するから「一臂」なんだね!中国大陸にはワクチン接種を怖がっている人が一定数いるらしい。んで「皆さん、ワクチン接種して"免疫屏障"を築こうね!」という内容の記事です。「一臂の力」を集めて築くわけですから、集団免疫の意味で使ってます。

なぜ最初っから"群体免疫"と言わなかったんでしょう。それは大陸が欧米の「集団免疫」をバカにしてたからだと思われます。

参考:瑞典承认群体免疫破产,崇洋跪美的公知脸疼吗?(「スウェーデン 集団免疫失敗を認める 欧米礼賛のメンツ丸つぶれ」北京日報 2020-12)

この記事は、一時、コロナ対策の最優秀国と称賛されていたスウェーデンをやり玉に、「中国の警告を無視して適切に対処しなかった欧米では、コロナの犠牲者が増えている。中国はコロナを封じ込めたのに、欧米は依然としてバカげた優越感に浸ったまま中国を批判している」と嘲笑しています。(警告なんてしてたっけ??)

ところが3月になると、イギリスでワクチン接種が進み、死者数が激減し始めました。

参考:英即将实现“群体免疫”?(「イギリス まもなく集団免疫実現か」新浪 2021-03)

そして

参考:多国提出“群体免疫”时间表,中国疫苗接种开始发力!(「多数の国が集団免疫スケジュールを提出 中国のワクチン接種 至急開始!」環球時報 2021-03)

唐突に接種を急ぎ始めます。

参考:国家卫健委:全国累计报告接种新冠病毒疫苗18980.9万剂次(「全国の新型コロナワクチン接種 累計1億8980万9000回」CCTV 2021-04)

で、全人民の90%接種を急ぎ、集団免疫獲得を目指すそうです。言ってること変わったー。

 

ちなみに、中国語の"集团"は、基本的に会社や団体などの組織を指すので、「集団免疫」と言いたい時には合いません。よって"群体"です。

台湾は最初っから、"群體免疫"でした。

 

 

コトバは生き物です。上記はあくまでも現時点で主流の言い方です。