しーらかんす式

音楽と日本語と中国語のブログ

毎日一語、中国語~北京議定書

まだ辞書に載っていない中国語の新語をひたすら書き連ねていきます

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北京議定書 /北清事変に関する最終議定書(Boxer Protocol /China and the 11 countries' final agreement on compensation for the 1900 turmoil)

ぺきんぎていしょ/ほくしんじへんにかんするさいしゅうぎていしょ

1901年9月、清国と列強11か国が講和した際に署名した議定書のこと。北清事変は義和団の乱を指す。

アヘン戦争、アロー戦争、日清戦争に敗れた清国は列強の大陸侵出を許してしまう。列強の支配や西洋文明、キリスト教に対し、清国民衆の反感は高まり、「扶清滅洋」を掲げる義和団が蜂起。義和団キリスト教宣教師や教会、鉄道を襲いながら膨張し、北京に入城する。

列強は清国政府に義和団鎮圧を要請するが、義和団に同調する清国軍人に日本とドイツの公使が殺害される事件が発生する。外国嫌いの西太后派による列強への宣戦布告に対し、イギリス、アメリカ、ドイツ、フランス、オーストリア、イタリア、ロシア、日本の8か国が清国に出兵。

連合軍は義和団を鎮圧し北京を占領。西太后は光緒帝を連れて紫禁城から逃走した。

講和交渉にあたったのは清国の大臣、李鴻章。出兵した8か国に加え、スペイン、オランダ、ベルギーが参加し、清国は多額の賠償金を支払うことになる。39年に及ぶ分割払いの利子も高額であり、前の日清戦争の賠償金も併せれば莫大な金額。この負担は、後に中華民国の財政にも重くのしかかった。

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詳細を思い出したい人は、学生時代の参考書とかご覧ください。

新語どころか120年前の話ですが、このところ中国大陸ではちょっとした話題になっているんです。

 

 

 

辛丑条约 [Xīn-Chǒu Tiáoyuē] 辛丑和约 [Xīn-Chǒu Héyuē] 中国与十一国关于​赔偿1900年动乱的最后协定 [Zhōngguó yǔ Shíyìguó Guānyú ​ Péicháng 1900 nián Dòngluàn de Zuìhòu Xiédìng] /九七国耻 [Jiǔ Qī guóchǐ]

"辛丑"は辛丑(かのとうし)で、十干十二支のひとつ。北京議定書が署名された1901年は辛丑の年でした。

"中国与十一国关于赔偿1900年动乱的最后协定""辛丑条约"の正式名称。ここで"中国"という名称が使われているのは、清国(自称"大清")が対外的に"中國"とか"中華大清國"と名乗っていたから。こういう歴史的な事柄を簡体字で書くと、なんかショボく感じるね。

"九七国耻""九七"は、北京議定書の署名日。中国大陸では今も9月7日を"九七国耻日"(国辱の日)と呼んでいます。

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左側が列強11か国で、手前から2人目が駐清公使だった小村寿太郎。右が清国政府側で、着席者の手前から2人目(かなり深く座っている人)が李鴻章、当時78才。列強と約一年に渡る交渉を経て議定書に署名調印した2か月後、11月7に病死しました。

この歴史的な写真が、最近になって大陸で話題になりました。きっかけは

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2021年3月の米中対話です。

2021の米中対話、1901年の列強と清国の交渉を並べて論じているセルフメディアがけっこうありました。というのも、今年(2021年)が1901年から120年後。つまり辛丑の年だからってこと。

「120年前、李鴻章が列強の要求を受け入れたのは中国が時代遅れで弱かったからだ。しかし今の中国は120前とは違い、当時の列強と互角になった」ということなんですね。

で、米中対話であれこれ言ってきた米国に対して、楊潔篪さんはこう言いました。

美国没有资格在中国的面前说,你们从实力的地位出发同中国谈话。甚至在20、30年前,你们就没有资格说这样的话,因为中国人是不吃这一套的。

中美高层对话全文来了!附现场视频完整版!澎湃新闻 より引用

米国には強者として中国に物を言う資格はない。20年前、30年前から、とっくに資格はなかった。なぜなら、中国人はもうその手は食わないからだ。

この「中国人はその手は食わない」という言葉が大陸人民に大受けしグッズ化されているとテレ朝かなんかが報道していました。 ちょっと天猫を見てみたら「その手は食わない」グッズ、まだいっぱい売ってた。

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美国人民当然是伟大的人民,中国人民也是伟大的人民。难道我们吃洋人的苦头还少吗?难道被外国围堵的时间还短吗?

中美高层对话全文来了!附现场视频完整版!澎湃新闻 より引用

米国の人民は偉大だが、中国の人民も偉大だ。それなのに、まだ西洋人は我々を苦しめようと言うのか。まだ外国に包囲され続けなければならないのか。

このくだり、ファイブアイズやらクアッドに対する批判と解釈したような日本語訳もありましたが、違うと思うんだよね。(参考:「聞いた話と違う」米中外交トップ会談、冒頭発言全文(下): 日本経済新聞

アヘン戦争から始まった国辱の数々。そして8カ国連合に列強に北京を占拠され署名させられた北京議定書は、西洋列強による国辱のピークだった(その後は日本に苦しめられるわけだが)。その時代を解雇して情緒たっぷりに述べたんだと思うんです。

この米中対話の数日後の3月22日、オーストラリアとニュージーランドの外相が新疆ウイグル自治区の人権侵害について共同声明を発表しました。(参考:ウイグル問題で豪・NZが共同声明、「人権侵害の明らかな証拠」  ロイター

この声明を受けての中国外交部華春瑩報道官の反応がこれです。

美国及其“五眼联盟”盟友是进行了协调,摆出了一副要打群架的样子。他们的嘴脸不禁让人想起了当年的八国联军,但这几个国家显然搞错了时代,身子进入21世纪第三个十年,对中国脑子还停留在19世纪末的晚清。他们显然不了解中国,不了解世界。现在的中国已经不是120年前的中国。

2021年3月24日外交部发言人华春莹主持例行记者会 — 中华人民共和国外交部 より引用 

ファイブ・アイズは足並みをそろえて中国にケンカを吹っかけている。まるで八カ国連合軍だ。しかし彼らは時代錯誤をしている。2021年になっても、彼らの中国に対するイメージは19世紀末の清末のままだ。彼らは中国を理解していない。今の中国は、もう120年前の中国ではない。

ね、北京議定書をめっちゃ意識してるでしょ?

さらに華春瑩報道官はこうも言っています。 

联合国有190多个成员国。“五眼联盟”等几个盟友代表不了国际社会。得道多助,失道寡助。中国坦坦荡荡,致力于同所有国家本着和平共处五项原则发展友好合作关系。看看世界地图就知道,中国的朋友遍天下。我们有什么可担心的呢?

2021年3月24日外交部发言人华春莹主持例行记者会 — 中华人民共和国外交部 より引用

国連加盟国は190か国余り。ファイブ・アイズなどは国際社会を反映するものではない。道を得れば助け多く、道を失えば助け少なし(孟子の言葉)。中国は広い心で、あらゆる国と平和的共存五原則に基く友好的協力を進める。世界地図を見れば分かる通り、世界中が中国の友人だ。何を案じろと言うのか。

1900年、列強+日本は連携しつつ義和団と戦い、北京を占領しました。しかし清国には、国の危機に共同作戦を行える同盟軍はいませんでした。

米中対話後、中共政府が慌ただしく一帯一路の参加国を訪問しているのも、120年前の轍は踏まないぞ、というところ。

こんな感じで、このところ大陸では120年前の北京議定書が話題にのぼりがちなのだ。

 

 

コトバは生き物です。上記はあくまでも現時点で主流の言い方です。