しーらかんす式

音楽と日本語と中国語のブログ

毎日一語、中国語~PM2.5、スモッグ

まだ辞書に載っていない中国語の新語をひたすら書き連ねていきます

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PM2.5/微粒子状物質(particulate matter)/大気汚染(air pollution)/スモッグ(smog)

ぴーえむにーてんご

PM2.5は、大気中を浮遊するの直径2.5μm(マイクロメートル)以下のとても小さな粒子のこと(1μm=1/1000mm)。吸い込むと呼吸器、循環器の病気を引き起こすリスクが高まるとされている。

主な成分は、SOx(燃焼による硫黄酸化物)、NOx(排気ガスなどによる窒素酸化物)、VOC(塗料、洗剤などによる揮発性有機化合物)や、それらが化学反応を起こして生じた粒子である。

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ちなみにスギ花粉の微粒子は30μmなのでPM2.5よりだいぶ大きい。

日本の大気汚染は改善傾向にあるが、経済成長著しいアジア諸都市で発生したPM2.5が到達するケースもあるので油断は禁物だ!

参考:微小粒子状物質の国内における排出抑制策の在り方について環境省

 

 

 

大陸
PM2.5 [PM èr diǎn wǔ] /雾霾 [wùmái] /细颗粒物 [xìkēlìwù]

台湾
細懸浮微粒2.5 [xìxuánfú wēilì èr diǎn wǔ]

PM2.5はそのまんま「ぴーあいむあーでぃあーうー」です。

で、PM2.5などの微粒子や北京の春の風物詩・黄砂(こうさ)によって大気が汚染されている状態のことを、以前は"雾霭天气" [wù'ǎi tiānqì]と言ってた気がするんですが、今は"雾霾天气"と言います。

"smog"は"smoke"(けむり)と"fog"(霧)を合体させた言葉ですが、"雾霭""雾霾"も合体語です。漢字が見づらいので拡大ー。

  • "雾霭""雾"(霧)"霭"(もや)
    →霧よもや、どちらも水分が起こす自然現象
  • "雾霾""雾"(霧)"霾"(クルマの排気や工場から出る有害物質)
    →水分による自然現象+ヒトの生活や生産活動によって生じた微粒子状物質

ということになっています(本来の"霾"は、岩石の粉塵の意味)。だから有害な物質を含むPM2.5はなどのスモッグは"雾霾"と言うほうが適切なワケです。

2013年、大陸ではスモッグを"雾霾天气"と言うことに決めました。

"雾霾"は10μm以下の微粒子状物質(PM10)のこと。そのうち、特に細かい2.5μm以下のものがPM2.5です。台湾でも、大陸のスモッグ情報を伝える時に"雾霾"を使っています。

北京に飛来する黄砂の正体は北西の砂漠や黄土高原から飛来した黄色い砂の微粒子+その他微粒子(雾霾)。

日本では、中国大陸が植林を怠って土地開拓を進めた結果、砂漠化が進行した、そのため黄砂の被害がひどくなっている、みたいに理解されてますよね。

でも大陸メディアは「近代化とは無関係!黄砂は3000年前の文献にも出てくる!以前はわが国北西部や華北で黄砂が発生していたが、昨今は緑化の努力により荒土は激減している!現在の黄砂はほとんどモンゴル国から飛んで来ている!」なんて言い始めました。

昔は砂漠化を気にしてたはずなんだけど、なかったことにしようとしてます??

参考:可笑!沙尘暴来袭,韩媒称沙尘暴起源于中国! 「笑える!黄砂襲来で韓国メディア『黄砂の起源は中国!』」(テンセント 2021-03)

この記事でも「今回の黄砂の発生源はモンゴル国だからw わが国は衛星で監視してるので間違いないからwww」と言っています。

 

思い起こせばたしか'02年の春。長期留学のため、私が北京に乗り込んだ日も、すごい黄砂でした。おまけに乾燥してるし、寒いし。なんでこんな所に来ちゃったんだよ……と泣きそうになったよ。

で、さっそく"沙尘暴" [shāchénbào]という言葉を覚えました。音的にカッコイイよね、shāchénbào

"沙尘暴"は、直訳するなら「砂嵐」なので、黄砂の有無には言及していません。でも一般に、大陸の都市部で春の訪れとともに吹き荒れる黄色い砂嵐のことを"沙尘暴"と呼ぶので「黄砂」と訳されています。正確に言うなら「黄砂の砂嵐」ですね。

その黄砂の砂嵐や"雾霾天气"が発生した時に使われる用語に"能见度"(視界)というのがあります。"能见度"は何メートル先まで目視できるか、という指標。

"沙尘暴天气"は、強風が吹いていて"能见度"が1km未満、つまり傾斜のない平地で1km先が見えないほど、砂ぼこりが舞っている状態を言います。

2021年3月15日に北京を襲った"沙尘暴"は、視界300~500mだったそうなので、立派な"沙尘暴天气"ですね!

今回のまとめ

  • PM2.5
    大気中を浮遊する2.5μm以下の微粒子。ヒトの生活や生産活動によって生じた物質が混ざっており、健康リスクがあるとされる。
  • 黄砂
    中国大陸の砂漠や黄土高原の砂を含む微粒子が、日本に到達して大気中に浮遊したり積もったりしている状態のこと。またはその黄色っぽい微粒子のこと。
  • 雾霾
    10μm以下の排気ガスなどを含む微粒子が、大気中を浮遊している状態のこと。スモッグ。
  • 沙尘暴
    1km先が見えないほど砂ぼこりを含む強風が、大陸の都市部を襲うこと。一般に、黄砂を含む春先の暴風を指す。北京の春の風物詩みたいに言われがちだが、北京以外でも発生する。辺り一面がオレンジ色に染まり、昼でも電灯が必要なほど視界が悪化する。幻想的と言えなくもないが、住民はとても大変。
  • 雾霭
    自然現象の霧やもや。

ちなみに"沙尘暴"も、"沙暴"(砂嵐)と"尘暴"(ちり、ほこりの嵐)を組み合わせた合体語です。

 

 

コトバは生き物です。上記はあくまでも現時点で主流の言い方です。