毎日一語、中国語~Tips
まだ辞書に載っていない中国語の新語をひたすら書き連ねていきます
Tips
ちっぷす
ちょっとしたヒント、コツ、アドバイスなど、ものごとをより良くするためのアイディアのこと。マニュアルや攻略法などの文中で電球、指差し、感嘆符のイラストとともに提示されることが多い。
大陸
温馨提示/提醒/小窍门/小贴士
広東語
貼士
"温馨提示"は、今世紀に入ってから大陸でよく見られるようになった表現。「ヒント」を意味する"提示"に"温馨"というきれいな言葉がかぶさっています。"馨"は「かぐわしい香り」の意味なので、「あったかくてよい香りのするヒント」となる。
"提醒"は、教える、気づかせる、注意する、指摘するみたいな意味。"窍门"は「コツ」で、"小"がつくことで「ちょっとしたコツ」となります。
いっぽう"貼士"は、広東語から来た外来語と思われます。大陸でも使われていますが、広東語で発音してみれば「てぃっ(ぷ)すぃ」となり"TIPS"に通じるよね!
"温馨提示"は大陸の民度向上のあらわれ
TIPSとは限らない"温馨提示"
"温馨提示"を最初に見たのは10年以上前かなぁ。オンラインゲームの翻訳をしていた時でした。
こんな感じのヤツです。
ゲーム内で表示されるテキストの中に"温馨提示"があったんですよ。何じゃこりゃ?と思って辞書を引くと"温馨"=「暖かい」とあります。「暖かいヒント」?どんなヒントよ?と思って中身を読むと、課金の方法とか報酬のゲット方法とかネットが落ちた時の復帰方法とかが書いてあるんですね。
ん~、これは場合場合で違う訳語を当てねばならんな、と考え、「お知らせ」、「Caution!」、「Tips」とかいろいろに訳した記憶があります。
"温馨提示"出現の前と後
"温馨提示"は"Tips"の意味でも使われますが、「お願い」とか「ご協力ください」の意味でも使われます。後者の場合は"Reminder"と英訳しているみたいですね。ホテルのベッドのところに「寝たばこはご遠慮ください」とか書いてあるアレの感じです。
で、以前はどうだったかと言うと。"禁止~"とか"请勿~"でした。たとえば「緑地に入らないでください」なら"禁止踩踏绿地"とかね。
それが今はこんな風に変化しているようです。
「草花がはにかみながら笑ってる、あなたは邪魔をしないでね」
やさしい~。婉曲表現ですよね。しかも韻を踏んでいます。"温馨提示"の表示はありませんが、これは"温馨提示"でしょう。
もうひとつ、街角の告知を見てみましょう。
近所に学校があるようです。
「学生達に良好で静かな環境を提供し、正常でな教育秩序を保ち、学生の外出時の安全を確保し、平和で調和のとれたキャンパスをつくるため、省が定める『学校および周辺の治安を総合的に管理するための暫定措置』に照らし、学校から30メートル以内に露店を出店することを厳しく禁じます。ご協力よろしくお願いします」
とか書いてあります。
そう、禁止する理由を説明しているんです。理解を求めている雰囲気があります。長文すぎて、かえってみんな読まないんじゃないかという気もしますが……。でもこんなの、以前だったら"禁止此地摆摊设点"だけですよ。
ちっとも"温馨"じゃない"温馨提示"
"温馨提示"は大陸風の表現です。なので香港市民も私と同じく「何じゃこれ?」と思ったみたいですよ。"温馨"とか言いながらちっとも"温馨"じゃないじゃん!ただの命令だろ!と言われているようです。
むむ、でも以前に比べれば婉曲で、格調高い、非高圧的な表現にはなっているんだけどね。
「エントランス前通路をふさぐべからず。停車禁止。生じた結果は自ら負うこと」
施設か工事現場か、クルマが出入りする場所に掲示された"温馨提示"のようです。さすがにこれは"温馨"じゃないな。
"温馨"は"提醒"や"贴士"の前に付けてもOK。"温馨提醒"だと、より禁止事項、お願い事項的な雰囲気になります。
"温馨"を"友情"に置き換えてもOK。この場合は、より親近感の漂う感じ、キッズ向けな感じになるっぽい。
「流してください」
TIPSと言えなくもない。
日本でもいろんな場所で中国語の掲示を見かけますが、"温馨提示"と書いてあるのは見たことないかなぁ。そのうち登場するかも!
コトバは生き物です。上記はあくまでも現時点で主流の言い方です。