毎日一語、中国語~カマラ・ハリス(アメリカ副大統領)
まだ辞書に載っていない中国語の新語をひたすら書き連ねていきます
カマラ・ハリス/カマラ・デヴィ・ハリス(Kamala Devi Harris)
2021年1月20日、アメリカ合衆国第49代副大統領に就任した人物。米国初の女性副大統領として注目されている。
父はアフリカ系ジャマイカ人の経済学者、母はインド人の医学研究者であり、いずれも60年代に米国に移民している。夫は弁護士でユダヤ系の白人。
カリフォルニア州出身。地方検事、カリフォルニア州地方長官を経て2016年に上院議員になる。2019年、米大統領選の民主党予備選に立候補するが後に撤退。2020年11月、副大統領に選出された。
大陸
贺锦丽 /卡玛拉·德维·哈里斯
大陸以外
賀錦麗 / 卡瑪拉·黛維·哈瑞斯
なぜか「ハリスさん」ではなく「カマラ・ハリスさん」と呼ばれるカマラ・ハリスさん。「カマラ」という名前がインパクトあるせいでしょうか?その「カマラ」、サンスクリット語で蓮(ハス、lotus)の意味らしいですね。素敵だ。
一説にはバイデン大統領より注目されているとか、4か月後には米国初の女性大統領になっているとか囁かれております。
そのカマラ・ハリスさんは、通常の音訳中国語名の他に、独自の中国名を持っているのだ。
"賀錦麗"はカマラ・ハリスさん自らネーミング
非漢字圏の人の中国語表記は、有力メディアの中国語版や大陸や台湾が勝手に決めちゃう印象です。しかしカマラ・ハリスさんの中国語、というか中国名"賀錦麗"を決めたのはカマラ・ハリスさんご本人。
より詳しく言うなら、地元の弁護士仲間である蘇榮麗さんという中国系アメリカ人のアドバイスによるものだそうです。
2003年、カマラ・ハリスさんがサンフランシスコの地方検事に立候補した際、中華系有権者が投票しやすいように中国名をつけることを提案したのが蘇榮麗さん。この提案を気に入ったカマラ・ハリスさんは、"賀錦麗"と名乗ることにしたんだって。自分で決めただけあって、キラキラネームっぽい?
尚、蘇榮麗さん自身は中国語が得意ではなかったため、台湾系アメリカ人である父親に相談したと言われています。
またこの時、カマラ・ハリスさんの夫、エムホフ氏も「自分も中国名が欲しい。Dragonの字が入ってるやつ」とお願いしたそうで、"任德龍" という中国名をつけてもらいました(エムホフは音訳だと"埃姆霍夫" )。仲良し夫婦じゃないのー。エムホフ氏は1964年生まれの辰年。そこまで知っててDragonをリクエストしたなら中国通だね!
参考:「賀錦麗」是台灣人取的?拜登副手曝中文名由來|Kamala Harris unveils meaning, story behind Chinese name | The China Post, Taiwan(「賀錦麗」の考案者は台湾人?バイデンの補佐役が中国語名の由来を明かす)
つまりカマラ・ハリスさんは親中国?
いやいや、中国名があるからと言って親中国とは限りません。選挙で勝つための作戦でしょ。大陸は、カマラ・ハリスさんがインド系なところが気に入らないみたいですよ。インドと大陸は今やかなり険悪だし。
ご主人のエムホフ氏については、大陸マネーとの関係が取り沙汰されていますが、今のところは何とも言えませんな。
親中国ならここまでやるべし
たとえばオーストラリアのケビン・ラッド元首相は当時バリバリの親中派で、自ら"陸克文"と名乗っていました。訪中時には中国語普通話でスピーチして、大陸人民の喝采を浴びていたしね。それに比べればカマラ・ハリスさんは、まだまだ。大陸詣でに来て普通話でスピーチしたら認めてやるアル~。
ちなみにラッドさんは習近平政権以降、大陸にはかなり批判的。大陸をよく知っているからこそ、いち早く警戒感を高めていたんでしょうね。今でもWeChatアカウントで持論を展開するなど、大陸メディアが注目する外国人政治家です。
中国系アメリカ人ってカリフォルニアにどれくらいいるの?
ジェトロさんの調査報告(2011年)によると、2009年時点でカリフォルニア州ロサンゼルス郡に居住する中国系アメリカ人は約38万人。ロサンゼルス郡の総人口は約400万人なので、およそ10人にひとりが中国系ということになる。
ちなみにアジア系で中国系に次いで多いのは韓国系。ロサンゼルス郡だけで20万人いるんだって。
"賀錦麗"と"哈里斯"、どっちがメジャーなの?
はい、Google Chinaで検索してみましたよ。
- "卡瑪拉哈瑞斯" ヒット数、約2390万件
- "卡玛拉哈里斯" ヒット数、約802万件
- "賀錦麗" ヒット数、約377万件
- "贺锦丽" ヒット数、約258万件
なんと、一番メジャーなのは大陸以外で使われている"哈瑞斯"でした。意外な結果だ。それだけ報道量が多いってことかな。
大陸メディアは"哈里斯"優勢
大陸メディアのニュース記事は、"卡玛拉・哈里斯"を採用している。sina.comなんかは"贺锦丽"でニュース検索するとヒット数0である。
ただし、なぜか"网易新闻"(ネットイースのニュースサイト)だけは"贺锦丽"を使っている。不思議ー。
海外メディアの中国語版でも、NYタイムズなんかは"卡玛拉・哈里斯"である。
結論:"贺锦丽"、"卡玛拉・哈里斯"、"卡玛拉・哈瑞斯"全部覚えるべし!
"黛维"と"德维"、どっちもいい感じ
カマラ・ハリスさんのミドルネーム"Devi"は、漢字表記が分かれている。
大陸以外が使っている"黛"は女性らしい美しいイメージ。好意的な訳語と思われる。"Harris"の"瑞"も、吉兆を意味するいい漢字。
大陸が当てた漢字は"德维"。"德"はもちろんいい漢字なので、これまた好意的な訳語。
そんなのどーでもよかろうと思われるかもしれないが、漢字の国では重要なことなのだ。たとえば大陸でとても嫌われていた小泉"小犬" 呼ばわりされていた。
首相は、米国のレーガン大統領については、台湾が"雷根"というカッコイイ漢字を当てたのに対し、大陸は"里根"というダサめの漢字を使用。中共政府にとってイヤな存在だったことが推測できようというものだ。ロナルド・レーガンは今や米原子力空母の名前だしね。
コトバは生き物です。上記はあくまでも現時点で主流の言い方です。