しーらかんす式

音楽と日本語と中国語のブログ

毎日一語、中国語~新茶飲料

まだ辞書に載っていない中国語の新語をひたすら書き連ねていきます

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新茶飲料/新中国式お茶飲料(Chinese new style tea drink)

2019年頃から大陸メディアが煽りだした全く新しい中国式お茶飲料のこと。
(新茶を使った飲料ではありません。というかしーらかんす式訳語なので、「新茶飲料」って言っても通じません。)

中国チェーン店、フランチャイズ店協会(もちろん大陸政府の下部組織)によれば

  1. 新鮮な果物、ナッツ、牛乳、チーズ、タピオカなどを使用するもの
  2. デジタル化、新技術を追求し、ヒトと機械の高効率な協働により製造するもの
  3. ブランド価値を創造し、顧客のエクスペリエンス、ブランド認知を重視するもの

であり、若い世代に訴求しているそうな。

要するにタピオカミルクティーなどのその場で注文して作ってもらうタイプの飲み物のことである。

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確かにオシャレ。でもそれほど目新しい感じもしませんが…

 

 

  

大陸
新茶饮 [xīn cháyǐn]中国新式茶饮 [Zhōngguó xīnshì cháyǐn]/手摇 [shǒuyáo cháyǐn]

台湾
手搖茶 [shǒuyáo chá]/手搖功夫 [shǒuyáo gōngfu chá]/泡沫茶 [pàomò chá]

「3億人の若者が毎日1杯飲めば1000億人民元(約1兆6000億円)の新市場になる」、「完全に新しい飲み物」と大陸政府が盛り上がっているのに対し、大陸人民はわりと冷静で「台湾の "手搖茶"が元祖」と解釈しているようだ。

台湾の"手揺功夫茶"

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台湾の手揺茶、Tea Topのいちごフェア。音が同じ"苺"、"没"、"美"、"毎"を掛けているの、分かった?

"手揺茶"

"手搖茶"はタピオカミルクティーと一緒に80年代に広まったらしい。つまり台湾では当時からタピオカだけでなく、果物、ゼリー、黒糖など様々なものが入ったお茶飲料を開発し始めていたということ。茶葉も紅茶に限らず様々な種類を使用。日本のほうじ茶までラインナップされている。その"手搖茶"の特徴は

  • 注文を受けてからその場で作る
  • 1杯ずつシェイカーで手作り
  • ヘルシーでナチュラルでカジュアル

ということ。

なぜ"手搖"なのかと言うと、お茶に果物やゼリーやなんやかんやを加えてシェイカーに入れ、さらに氷も入れてシェイクして作るから。つまり作り方はカクテルみたいな感じ。こうやって手間暇かけているうえ、もちろんベースである茶葉やお茶の入れ方にもこだわっているから"功夫"というワケ。("功夫"には時間をかけて工夫するという意味がある。カンフーじゃないよ!)

"泡沫茶"

お茶をシェイカーに入れて激しく振ると、中身と空気が混ざりあって泡立つ。で、カップに注ぐと泡部分が上に浮かび蓋をしたような感じになるよね?

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こんな感じ。なので"手搖茶""泡沫茶"foamy tea)とも呼ばれている。

タビオカやゼリー、プリンなんかを球状にしたものが入ってるものも、"泡沫茶"と言うからややこしいんだけど、その場合は"bubble tea"ってこと。ダブルミーニングになってるかも。

 

台湾の"手搖茶"店は大陸にも進出している。中でも2007年に大陸市場に参入した"CoCo都可"知名度は抜群らしい。

cocofreshtokyo.amebaownd.com

"CoCo都可"は日本にも進出しているんですね。今のところタピオカミルクティー屋さんという括りにしているようだけど、メニューを見ると"手搖茶"に他ならない。

 

大陸流製造法&販売戦略+"手揺茶"=新茶飲料

では大陸政府が盛り上げようとしている新茶飲料が、台湾の"手搖茶"のまるパクリかと言うとそうでもない。台湾"手搖茶"の特徴は 

  • 注文を受けてからその場で作る
  • 1杯ずつシェイカーで手作り
  • ヘルシーでナチュラルでカジュアル

と前に書いた。いっぽう大陸新茶飲料の特徴は

  1. 新鮮な果物、ナッツ、牛乳、チーズ、タピオカなどを使用する
  2. デジタル化、新技術を追求し、ヒトと機械の高効率な協働により製造する
  3. ブランド価値を創造し、顧客のエクスペリエンス、ブランド認知を重視する

だった。

比較してみると、2と3が違うのが分かる。つまり中身は一緒だけど作り方と売り方が違うんですねー。

 

大陸新茶飲料は「シェイカーで手作り」にこだわらない

「新型コロナを克服し立ち直った武漢」の風景として、日本のニュースでも「ミルクティー屋の行列」が紹介されていた。あれも実は新茶飲料店のこと。

参考:茶颜悦色武汉开业:排队8小时,一杯100块,奶茶如何绑架你的味蕾_腾讯新闻

「茶顔悦色 武漢にオープン 8時間並んで1杯100元 ミルクティーはどのように人々の味覚神経をとりこにしたか」(※100元は日本円で約1600円。っても定価ではなく転売価格のことらしい)

8時間並んだって……。じゃあ1杯ずつシェイカーでシャカシャカするワケにもいかないよね。つうわけで上記特徴2でも「デジタル化、新技術を追求し、ヒトと機械の高効率な協働により製造する」と言っているから、シェイカーに替わるマシンを取り入れていると思われる。また、事前にスマホアプリで注文を入れて決済するシステムやデリバリーなんかも含まれるんだろう。

 

大陸新茶飲料はコラボの嵐!

特徴の3「ブランド価値を創造し、顧客エクスペリエンス、ブランド認知を重視する」。

マーケティング用語が羅列されてます~。大陸、変わったんだね。もう釣銭を投げてよこすような店員さんは存在しないんだろうか…。

さておき。ブランド価値の創造、かなり頑張っている!

スキンケア化粧品とコラボ!

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わが国でもディズニーやサンリオその他とコラボしたキャラクターコスメが人気だが、大陸でも同様の手法がパクられて取られている。

この百雀羚は老舗のスキンケアブランド。キャラクターコラボを得意としているが、中華民国期を彷彿とするレトロモダンなイメージ戦略もやっている。その百雀羚のオリジナルキャラクター、阿喜与阿雀と新茶飲料Hey Teaのコラボ広告が上のイラスト。

 

ファッションブランドとコラボ!

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このいかついお二方はTik Tokで人気のネットセレブさんだそうです。で、お二人が着ているのが太平鳥PEACEBIRDというファッションブランドの服。

大陸では現在、工業情報化部という国務院直属機関の指導のもと、現代の技術と中華伝統のものづくりを融合させようという動きが起こっている。この太平鳥も上の写真のように中国っぽいモチーフを取り入れつつ新茶飲料Hey Teaとコラボしている。

 

自然派化粧品とコラボ!

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自然堂CHANDOは自然派化粧品のブランド。ヒマラヤの氷河から採取した水で製造したとされるスキンケア化粧品が人気なワケだが、工業用に採取しちゃって大丈夫なんだろうか??

さておき、上のイラストの人物が右手に持っている箱は自然堂のシートマスクらしい。左手に持っているのは楽楽茶の新茶飲料。

 

お菓子メーカーとコラボ!

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出たー!世界最大の米菓メーカー、旺旺集団です。コラボしているのは日本にも進出している新茶飲料、奈雪の茶。

旺旺集団のすっとぼけキャラ旺仔は、大陸人民にとって幼い日の郷愁を誘うらしい。日本ではキャラ出しせずに展開中の旺旺集団、大陸では全面的に旺仔を押し出しているぞ。

 

人気タレントとコラボ!

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新茶飲料、小鹿茶の広告でイメージキャラクターをやってるのは、大陸の男9人アイドルグループ、X玖少年団(何て読むのかよく分からない)の肖戦さん。なんかすごい人気らしいよ!女子だけに、だと思うが。

新茶飲料の消費者は75%が女性だそうなので、イケメンさんを使うのが効果的なんでしょうね。わが国でも化粧品のCMに男性タレントが出演したりしてるもんね。 

大陸の消費嗜好は国内回帰の真っ最中らしい。特に大陸女子達はわが国同様に韓国タレントに傾倒し、韓国ブランドのアパレルや化粧品がヒットしていたようだが、それは過去の話。近年は国策としてありとあらゆる分野で中華の伝統や国産品に力を入れている。おかげで韓国コスメなんかは市場から駆逐され、広告からも韓国タレントが消えつつあるらしい。

韓国の国策をそのままパクって、自国タレント、国産品への流れを作っているのは見事ではないか?わが国もちったー見習ってほしい。でもメディアからしてアレだから無理か。

 

てなワケで、新茶飲料のコラボ戦略は国内回帰が目立っているが、最後にそうでもないのをご紹介。

 

 コカコーラとだってコラボ!

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世界のブランド、コカコーラと新茶飲料、楽楽茶のコラボ。お茶にコーラを入れてるの?なんかよく分かんないけど、コカコーラってわが国でもイチゴ味とかリンゴ味とか出してますもんね。お茶でもイケるのかもしれませんね。

 

というわけで顧客エクスペリエンスは向上してるかな?

 

以上、日本ではフツーに見られる販売戦略だが、大陸でこういうことが行われているというのは隔世の感がある。こんなお店や商品や広告があるんなら、何も海外に繰り出さなくてもいいんじゃないか?って思うんだけど、どうなんでしょう…。

わが国では「タピオカの次は何だ?」なんてのんきなこと言ってますが、タピオカミルクティーは新茶飲料の多彩な商品群のうちの1商品に過ぎない。そのうち大陸新茶飲料店が大挙して日本に押し寄せてくるぞ~。

 

 

コトバは生き物です。上記はあくまでも現時点で主流の言い方です。